2023.03.10

導電性フィルムの シート抵抗(表面抵抗率)/抵抗/面ヒーターのパワー/温まりやすさの関係:META社NANOWEB®透明ヒーターのご設計に

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この記事の監修者
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電熱線のヒーターは昔より多く使われてきましたが、導電性フィルムを使い、面全体を均一に加熱する、「面ヒーター」と呼ばれるヒーターがあります(参考記事:「NANOWEB®透明導電性フィルムで融雪・曇り止めヒーターを透明に」)。

本記事では、どのような導電性フィルムを、どういう形でヒーターにすれば、よりパワフルな面ヒーターを作ることができるのか。これを検討するるうえで重要になる「シート抵抗(表面抵抗)」という物性値と、そこからどのようにヒーターの性能が計算されるのか見てみたいと思います。

シートの抵抗値設計

  • 導電性フィルムの電気の通しやすさは、シート抵抗(表面抵抗)という値で確認できます。
  • 同じシート抵抗 & 同じ長さ/幅 比なら、面積の大小によらず、ヒーターの抵抗値は等しくなります。
  • 長さに対して幅が大きくなるほど、ヒーターの抵抗値は小さく、逆に小さくなるほどヒーターの抵抗値は大きくなります。

導電性フィルムの電気の通しやすさは、シート抵抗(表面抵抗)という値で表される事が多いようです。

シート抵抗は正方形のシートの両辺間あたりの抵抗値(Ω/sq)で表されます。

例として、導電性フィルム シートの2 つの対辺のそれぞれに銅製の電極(バスバー材)を接着したとします。

この場合、2つの電極に抵抗測定器のプローブを当て、2辺の間の抵抗を測定すると予想される抵抗の測定値は次のようになります。

_=_×(∕) (シート抵抗と抵抗値の式)

※各文字は次を意味しています。

RM:抵抗 測定値(Ω)

Rs:シート抵抗公称値(Ω/sq)

L:シートの電気導通部長さ、W:シートの電気導通部幅

 

具体的な例を見て見ましょう。

5cm ×5cmの正方形シートサンプルにて、材料のシート抵抗が3.5 Ω/sq.だった場合には、両辺間の抵抗値は 3.5Ωを示します。

次に、シートのサイズが 10cm×10cmの場合も、同じように抵抗値は同じ3.5Ωとなります。大きさが違っても、どちらも長さと幅が同じ正方形なため、抵抗値は等しくなります。

あるいは、下図に示すように、長さは 8cm、幅は 4cmの長方形のシートサンプルで考えて見ましょう。

このサンプルにて、上記の式を使用すると、予想される測定抵抗は 7.0Ωになります。

〖7.0〗_=〖3.5〗_(∕ )×(8_∕4_ ) (式a)

同じシート抵抗なら、長さが長く、幅が細いほど抵抗値は大きく、反対に長さが短く、幅が太いほど抵抗値は小さくなります。

ヒーターのパワーと抵抗値

  • 同じ電圧Vを使うのであれば、抵抗値Rが小さいほど、ヒーターのパワーは反比例して大きくなります。
  • ヒーターの温まりやすさは、面積あたりのワット数=パワー密度(W/m2)で決まります。

次に、このフィルムシートの抵抗を利用してフィルムをヒーターに使うことを考えてみましょう。

学校の授業などでも習われるように、電圧の大きさをVとして、大きさIの電流が流れる抵抗(抵抗値R)があったとすると、ここで生じる抵抗熱の大きさPは次のようになります。

※P:ヒーターの抵抗から生じる1秒あたりの抵抗熱の大きさ(W :ワット = J/s)

V:ヒーターの抵抗に加わる電圧 (V: ボルト)

I:ヒーターに流れる電流(A: アンペア)

また、オームの法則という関係により電圧Vと電流値I、抵抗値Rの関係は次のようになります

(オームの法則)

そのため、抵抗値Rのヒーターに電圧Vを加えた時のヒーターのパワー(1秒あたりの抵抗熱の大きさ、ワット数)は次のようになります。

これをご覧頂くと、同じ電圧Vを使うのであれば、抵抗値が小さいほど、ヒーターのパワーは反比例して大きくなることが分かります。

ヒーターを安全電圧と呼ばれるような低電圧で使いたいような場合は、低抵抗のヒーターが必要となります。

 

そして、ヒーターの温まりやすさは、面積あたりのワット数=パワー密度(W/m2)で決まります。ヒーターを設計される際は、ご利用の環境での、面積当たり放熱量(熱伝達係数)、あるいは加熱したい材料の熱容量、ご要求の加熱時間…などといった条件と、加熱したい温度上昇量に対し、このパワー密度がどれだけあればよいか、検証するような形となります。

より温まるヒーターにするには

まとめとして、もし

  1. 限られた電圧の大きさの中で
  2. なるべく短い時間
  3. 一定の面積のものを
  4. 高い温度に加熱したい(パワフルに加熱したい)
    と考えた時には、

なるべく、

  1. シート抵抗の小さな導電性材料を使い
  2. 低抵抗となる形で(長さは短く、幅は太く)
  3. 加熱する面積を小さくしぼり(パワーを集中させて)
    ヒーターを設計されると、効果的に(より高いパワー密度に)なる

ということが言えます。

透明導電性フィルムを使ってパワフルな透明 面ヒーターを実現

META®社(Meta Materials社 NASDAQコード:MMAT)の提供するNANOWEB®透明導電性フィルムは、高い透明性を保ちつつ、他の透明導電性材料を凌駕する高い導電性、フレキシビリティを実現できることを特徴にしています。

従来のITOでは、20Ω/sq以下のシート抵抗がコスト効率のいい手法では困難とされていましたが、NANOWEB®でははるかに低いシート抵抗も、透明性の高い材料で可能になります。

NANOWEB®透明導電性フィルム 標準サンプル仕様表

META NANOWEB

このため、透明ヒーターにお使い頂ければ、安全電圧のような低電圧でも、より自在な形状自由度で、パワフルな面ヒーターを実現頂けます。また、透明性が高ければ視認性を損なうこともないため、窓のような部分においても必要な部分だけを直接、集中して温めることもしやすくなります。

センサーやカメラの光学窓・自動車のフロント/リヤウィンドウの凍結防止・融雪、ゴーグルの曇り防止などにお使い頂ければ、視界を損なうことなく、より効果的な曇り止めや凍結防止が可能となります。

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