2024.06.27
自動運転を実現する先進技術とは?自動運転の現状と今後をふまえご紹介
WEBマガジン事例紹介
近年、世界各国で自動運転の実用化にむけて実証実験がおこなわれています。
今回、自動運転とは具体的にどのような条件を満たすものなのか、またどのような技術で実現されようとしているのかを、自動運転を実現するために必要となる3つのカテゴリの先進技術と、自動運転の現状と今後をまとめてご紹介します。
自動運転とは
自動運転というと、多くの方は完全にドライバーが不要で自動走行することをイメージされると思いますが、自動運転は達成レベルに応じて1から5までレベル分けがされています。その内容は下記の表のとおりとなります。
自動運転化レベルの定義の概要
レベル | 名称 | 定義概要 | 安全運転に係る監視、対応主体 |
---|---|---|---|
運転者が一部又は全ての動的運転タスクを実行 | |||
レベル0 | 運転自動化なし | 運転者が全ての動的運転タスクを実行 | 運転者 |
レベル1 | 運転支援 | システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行 | 運転者 |
レベル2 | 部分運転自動化 | システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行 | 運転者 |
自動運転システムが(作動時は)全ての運転タスクを実行 | |||
レベル3 | 条件付運転自動化 | システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答 | システム(作動継続が困難場合は運転者) |
レベル4 | 高度運転自動化 | システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行 | システム |
レベル5 | 完全運転自動化 | システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に(すなわち、限定領域内ではない) 実行 | システム |
国土交通省自動車局.“自動運転車の安全技術ガイドライン”. 平成30年9月 |
自動運転のレベルごとの普及状況
自動運転レベル1・2は、ADAS(先進運転支援システム)と呼ばれるシステムに相当するもので、運転主体は人間です。レベル1の技術の一部は搭載の義務化が始まっていますし、レベル2の機能をもつ自動車も多くの国内メーカーから発売されています。
自動運転レベル3以降は、運転主体がシステムに変わります。日本では2020年4月に道路交通法および道路運送車両法が改正され、レベル3による走行が可能になりました。2021年3月にはホンダからレベル3実装車が発売されるなど、まだ限定的ながら国内での商用化が進んでいます。
自動運転レベル4実装車は2021年7月にドイツで解禁され、2023年4月に日本でもレベル4に対応した法改正がおこなわれました。アメリカや中国を中心に世界各国で実証実験や実用化が始まっており、日本では2025年頃の実用化を目指して実証実験が進められています。具体的には、モビリティサービスにおいては2023年5月に福井県永平寺町で国内初となるレベル4のサービスが開始されており、自家用車・物流サービスにおいては2025年の高速自動車道での実用化を目指しています。
自動運転レベル5ではあらゆる条件下で自動運転が可能となり、完全に人が不要になります。現時点ではレベル5の開発をおこなう企業はまだ限定的で、レベル5の実現には先進技術が幅広く必要となります。世界各国で2030年代頃を目標に実現を目指す動きが多く、実用化はもう少し先になる見込みです。
自動運転を実現する先進技術とは?
では、自動運転の実現に向けて活用されている・活用が期待される先進技術は、どのようなものがあるかを大きく3つのカテゴリーでご紹介します。
その① 自動車の位置や周辺情報の認識する技術
自動車の位置や周辺情報など、自動運転をする際の予測・判断を可能にする技術には、位置特定、情報認識、通信の技術があります。
位置特定
位置特定は、車両の位置を正確に把握するために用いられる技術です。カーナビではGPSを用いて車両の位置を特定していますが、GPSでの位置特定には多少の誤差が発生します。人の運転であれば多少の誤差を補うことができますが、自動運転では少しの誤差が大きな事故に発展するリスクがあります。
そこで、精度の高い位置を特定するために採用されているのが、SLAM(スラム)です。SLAMは、センサーなどを用いて高精度な3次元のマップを作成して位置を特定することができ、自動車に加えAGVやドローンなどさまざまな機器で用いられるようになっています。
SLAMに用いられるセンサーの具体的な製品としては、Luminar社が提供する、レーザーレーダーであるLiDARのIrisなどがあります。
情報認識
情報認識は、道路の車線や他の自動車・歩行者など周囲の情報を認識するために用いられる技術です。情報認識には、位置特定で紹介したセンサーであるレーザーレーダー(LiDAR)のほか、レーダーやカメラなどが採用されています。夜間や悪天候時など通常のRGBカメラでは情報認識が困難なシーンでは遠赤外線カメラが有効です。
遠赤外線カメラの具体的な製品としては、Teledyne FLIR社のBosonやLeptonなどがあります。
>>遠赤外線カメラ Boson カメラモジュール(Teledyne FLIR)
>>遠赤外線カメラモジュール Lepton(Teledyne FLIR)
また、2台のカメラを利用して立体的な情報認識を可能にするステレオ検出技術も、自動運転に有効な技術として活用が検討されています。
通信
通信は、渋滞情報や事故情報、工事情報などリアルタイムな情報を取得するために用いられる技術です。自動運転では常に車両が移動しているため、位置情報をやり取りしながら位置に応じた情報をタイムリーに取得する必要があります。そのような大容量のデータでも低遅延で送受信できる技術として、5Gや6Gの活用が期待されています。
また近年では、歩行者やサイクリストの情報を路上の電柱(スマートポール)に設置したセンサーで検知し、車両のセンサーの死角にある情報を路車間通信で提供する技術があります。このような技術は自動運転の実現だけでなく、歩行者やサイクリストなどの道路利用弱者の安全にも貢献する技術です。道路利用弱者の保護という点では、スマートフォンの普及率と端末にGPSが搭載されている点を活用し、道路利用者と車両の衝突を予測しアラートを出すというソリューションも登場しています。
>>セルラー通信ベース V2X事故防止ソリューション(Eye-Net Mobile)
その② ドライバーの判断を代替する技術
ドライバーの判断を代替する技術には、人工知能、事象予測、プランニング、データ処理などがあります。
人工知能(AI)
人工知能(AI)は、人の脳の代替としてさまざまな判断をおこなうコア技術です。取得した情報を一定のアルゴリズムに基づいて処理し、処理結果に従って適切な操作を実行します。
事象予測
事象予測は、周辺情報や天候などの条件から発生しうるリスクを予測し回避するために用いられる技術です。AIによるディープラーニング(深層学習)などから事故発生ケースの原因を分析することで、過去に発生したことのないようなリスクまで予測が可能になります。
プランニング
プランニングは、経路情報や交通情報などをもとに、最適なルートを導き出すために用いられる技術です。このプランニングも、現在ではAIを活用してリアルタイムな情報をもとにおこなわれるのが一般的です。配送業を中心に、AIによるルートの最適化が進められています。
データ処理
データ処理は、リアルタイムで得られる膨大な情報をスムーズに処理するために用いられる技術です。ビッグデータ処理も近年のトレンド技術といえますが、ビッグデータ処理にはデータを記憶しておく領域やデータを高速で処理できるCPUなどが必要になります。自動運転で活用するためには、記憶装置やCPUなどビッグデータ処理に必要となる部品をいかに小型化できるかが重要となるでしょう。
その③ ドライバーをモニタリングする技術
現在の日本で実用化されている自動運転はレベル3までであり、海外で実用化されているレベル4も安全確保のためにまだドライバーが搭乗しているのが実情です。
レベル4が安定して運用できるようになるまでは、ドライバーの居眠りやわき見、意識喪失などの体調不良や発病をモニタリングする技術も必要になるでしょう。
ドライバーをモニタリングする技術としては、AIを用いたドライバーの状況分析などが挙げられます。特に、感情認識AIは、カメラでドライバーや同乗者の顔をスキャンし、顔のパーツや表情筋の動きを読み取り、機械学習を使用して感情や精神状態の推測を行います。
車室内の快適さを乗員の感情から読みとることで適切な車室内環境の設定に反映させたり、ヘルスケアの観点からも注目される技術です。具体的な製品としてはBlueskeye AI社の感情認識AIなどがあります。
まとめ
この記事では、自動運転の概要と進化の歴史、自動運転を実現する先端技術をご紹介しました。
現在の自動運転の多くがレベル3となっていますが、今後は自動運転を支える先天技術の開発・普及がすすみ、レベル3の領域拡大やレベル4以降へのシフトが進んでいくでしょう。自動運転を実現する先端技術製品にご興味のある方は、ご遠慮なくお問い合わせください。
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