2014.04.22
【Webマガジン Vol.9 – Apr., 2014】赤外線カメラの初歩
WEBマガジン
赤外線カメラでの温度計測
3. 赤外線カメラでの温度計測
赤外線カメラは、物体表面から放出される熱放射(赤外線)を検出することで温度計測を行います。この時に用いられるのが次のプランクの法則の式であり、これから導き出される黒体放射スペクトルです(図3)。
プランクの法則の式
ここでは、
Wλb = 波長λにおける黒体の放射スペクトル強度強度
c = 真空中の光速度 (3 x 108 m/s)
h = プランク定数 (6.6 x 10−34 J·s)
k = ボルツマン定数 (1.4 x 10−23 J / K)
T = 絶対温度
λ = 波長 (µm)
図3. 黒体放射スペクトル(100 °K~1,000°K 半対数目盛)
熱放射は物体を構成する原子や分子などの振動による電磁波の放出現象であり、物体の表面温度を反映しています。“黒体”はすべての周波数の電磁波を吸収するという理想的な物体ですが、この時パワースペクトルは温度のみに依存します。この熱放射は光と同じ電磁波なので、デジカメが被写体の光学的な像を映すように、赤外線カメラはこの熱放射の像を映すことがきます。
赤外線カメラは被写体表面の赤外線放射輝度分布をセンサー受光面に写して、それを温度分布に変換しています。輝度が倍になると取り込まれる放射エネルギー量も倍になり、センサーから出力される信号電圧も倍になります。前述したInSbによるセンサーでは、シリコンのイメージセンサと同様に半導体内で起こる光電効果を利用して、この放射エネルギーを電子に変換し、蓄積して電気信号を生成しています。この事情は、各ピクセルに小さなバケツがあり、そこに蛇口から水(放射エネルギー)を溜め込むアナロジーを思い浮かべてください。カメラにはシャッタースピードが設定できるようになっており、照度に合わせて調整し適正な露光量を取り込むというのは、すべてをメカで動かすフィルムカメラを使い慣れた向きにはお馴染みのことですが、最新の赤外線カメラにも同様の調整が必要です。
4. 赤外線カメラでの温度計測における注意点
測定対象となる温度仕様は、“フリアー システムズ社仕様書”にある温度機能を見ることで確認できますが、より確実な温度計測を実施するために、使用上でいくつかの注意が必要になります。
- 4-1. レンズの選定
測定にマクロレンズを使用した場合、マクロレンズの焦点深度は浅く、また拡大しているために十分な熱放射が得られない場合があります。こうしたケースではピント合わせに補助光源を一時的に用いることも多いです。なお、マクロレンズは近接して撮影するため、被写体が高温の場合は、レンズあるいはカメラ内部の温度が上がり、そうした部分からの熱放射が外乱として温度計測に影響することがあります。そのような場合はWD (ワーキングディスタンス) の長いレンズを用いる事で対応できます。