2025.02.25

車載HMIの新常識を解説。次世代技術がもたらす操作性と快適性の向上とは

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コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
コーンズテクノロジーでは先進的な製品・技術を日本産業界へ紹介する技術専門商社として、通信計測・自動車・防衛セキュリティ・電子機器装置・航空宇宙・産業機械といった技術分野のお役立ち情報を紹介しています。

さまざまな分野でDXや業務のIT化が進むなか、HMIが担う役割も拡大を続けています。自動車業界でもHMIが担う役割と期待が大きくなっています。この記事では、HMIとは何かをおさらいしつつ、自動車業界にフォーカスし、HMIで期待されている進化、その具体的な製品例などをご紹介します。

 

HMI(ヒューマンマシンインターフェース)とは?

HMI(Human Machine Interface:ヒューマンマシンインターフェース)とは、人間と機械の情報伝達を仲立ちする装置や仕組み、テクノロジーの総称です。大きく以下の2つに分類できます。

 

  • 人間が機械に指示を出すHMI:マウス、キーボード、マイク、音声認識システムなど
  • 機械が人間に情報を伝えるHMI:ディスプレイ、計器メーター、スピーカーなど

 

HMIは、インターフェース(Interface)の名称どおり、人間と機械の接点・橋渡し役となるものを幅広く指します。ディスプレイやマイクなどの物理的な装置から、音声入力システムのような技術・テクノロジーまで含まれます。

HMIの活用例としては、製造業の現場であれば、工場の様々なカメラやセンサーで取得した情報をHMIを使い、製造ラインの監視・異常発見などへの貢献といったものがあったり、医療業界での患者さんのモニタリングや医療機器の制御といったHMIの活用があります。

 

 

自動車業界でのHMIの活用事例

今回フォーカスする自動車業界において、かつては「MADE」、昨今は「CASE」という言葉のように百年に一度と言われる変革が現在進行中です。それにともないHMI技術は重要な重要な役割を期待されていますので、ご紹介します。

「MADE」:Mobility・新たな移動手段、Autonomous・自動運転、Digitalized・デジタル化、Electric・電動化
「CASE」:Connected・コネクティッド、Autonomous・自動運転、Shared・シェアリング、Electric・電動化

ADAS・自動運転システムの発展とHMIへの期待

近年、注目される自動運転システム、ADAS(先進運転支援システム)がより一般的になるにつれ、自動運転システム・ADASに欠かせない要素設備として、車載HMIの研究が進んでいます。

自動運転レベル1および2に相当するADASは、運転の主体はあくまで人間であると定められています。ADASは、車体の加減速や左右の動きをシステムが支援し、滑らかな制動を目指しますが、人間がハンドルを握り周囲の状況を判断し運転します。それに加え安全性を考慮すると、車載HMIにはタイムラグなくスムースに情報を人間に伝達できる品質が必須であり、各社が車載HMIの研究開発を進めています。ある調査によれば、2023年時点の車載HMIの世界市場規模は230億ドルにものぼり、2032年までには660億ドルを超えると予想されています。

車載HMIの課題としては、やはり膨大な情報からその瞬間に必要な情報のみを即時に選択し、ドライバーに伝えることの技術的なハードルが挙げられます。現在は運転者とのシームレスなコミュニケーションを可能にする次世代HMI技術の需要が高まっています。

>>自動運転を実現する先進技術とは?自動運転の現状と今後をふまえご紹介 | コーンズテクノロジー

 

自動車業界において、HMIで期待される進化とは?

前述のとおり、車載HMIには、大量の情報を取捨選択しドライバーと瞬時にやり取りをおこなう役割が求められています。その実現手段として注目されるのがAIの技術です。

AIは、事前に膨大なパターンを学習させることで、データの高精度な解析や予測を実行できます。車載HMIにおいては、通信すべきデータの絞り込みによる通信負荷の軽減や、運転者の特性も含めた多変数の分析による高精度予測などを手助けします。

また、プロトタイプを仮想空間上に表示することで製品開発の速度を向上させられるとして、VR技術も注目されています。高性能なVR技術は物理的なプロトタイプの作成を不要にし、製品開発の時間的・予算的コストを削減します。

昨今、AIが社会的に注目され、多様な業界でHMIの進化も進んでいくと予想されますが、AIやVRとHMIの協奏は自動車業界に置いても期待されています。

 

車内空間の価値向上につながる、注目の次世代HMI技術

自動車のHMI技術がこれまで以上に注目されている理由のひとつには、自動運転技術の発展により安全性の向上はもちろん、車内での付加価値向上への期待があげられます。今後期待されている次世代HMI技術をいくつか紹介します。

卓越した認識精度を誇るハンドジェスチャー認識ソフトウェア(Motion Gestures社)

Motion Gestures社のハンドジェスチャー認識ソフトウェアは、100%に近い認識精度を維持しながら、従来の10分の1程度の期間でジェスチャー認識機能を開発できることを目指したプラットフォームです。

手のひらの動きを21の関節の動作として認識し、AI技術も駆使して高精度な判別をおこないます。ハードウェアやアプリケーションに依存しないソフトウェアプラットフォームであり、カーナビからスマートフォンまで、カメラないしはカメラを持つデバイスがあれば、ハンドトラッキングを組み込むことができ、車載への応用も期待されています。

>>AIベース・ハンドジェスチャー認識ソフトウェアプラットフォーム

 

ドライバーや同乗者の感情や精神状態を推測や疲労度測定を可能にする感情認識AI(BlueSkeye AI社)

BlueSkeye AI社の感情認識AIは、対象者の表情から感情の移り変わりをモニタリングできるHMIです。筋肉の動きや目線など、66点の要素をカメラで読み取り、感情という主観的な概念を定量的・客観的に測定します。ドライバモニタリング用途などで大きな注目を集めています。

この製品は、「楽しい」「悲しい」などのシンプルな感情をとらえるのではなく、感情の速度や大きさ、推移まで計測できる点が特徴です。海外では、パーソナルケア商品のユーザーテスト中に使用し、言葉やアンケートではわからない本当の気持ちを探るために活用された事例もあります。

また、特筆すべきは、ノッティンガム大学とともに行った実証実験で、BlueSkeye AIの疲労度評価は、欧州連合(EU)によって定められている感度40%の閾値を大きく上回り、ドライバーの眠気を正確に特定する能力を持つシステムであることが示されました。これにより欧州連合(EU)が車載搭載に対して要求する基準を満たしたことになりました。

>>感認識AI BlueSkeye AI 一般産業向け

 

裸眼3Dディスプレイ(SeeCubic社)

SeeCubic社の裸眼3Dディスプレイ技術はレンチキュラーレンズと独自のソフトウェアの組み合わせによって、専用メガネやアイトラッキングセンサーによるアイトラッキング無しで3D表示を実現します。

この技術により、特定の1名のみへの3D表示ではなく、レンジ内からディスプレイを見る多数の方への3D表示を可能とします。

同社の3Dディスプレイ技術を取り入れていただくことで、自動車のメータークラスターのみならず、ナビなどのセンターディスプレイや、後部座席のエンタメ用ディスプレイなど車内の様々なディスプレイへこれまでにない視覚体験を提供します。

 

薄型でシームレスな一体成型を可能な射出成形構造エレクトロニクス(IMSE®)技術(TactoTek社)

TactoTek社の射出成形構造エレクトロニクス(IMSE®)技術は、3Dプラスチックの中に精緻な電子部品や印刷回路を組み込む革新的な技術です。

近接センサーやLEDライト、BluetoothやWi-Fiのアンテナといった電子部品を頑丈なプラスチック内に一体化させ、自社製品に必要な機能を付加できます。表面の材料にはプラスチック以外に高級感のある本物の木材を利用することも可能で、視覚に訴えるエレクトロニクスを思いのままに作成でき、車載用HMIに革命をもたらすと期待されています。

>>射出成形構造エレクトロニクス(IMSE®)技術

 

まとめ

HMIはヒューマンマシンインターフェースの略称であり、人間と機械の情報伝達を助ける道具や技術群を指します。AIやVRの技術が進化するなか、多様な分野で研究が進んでいますが、特に自動運転技術と深い関わりのある自動車業界では市場規模が急速に広がっています。IT化やDXが進む中、HMIの存在は今後さらに重要度を増していくと考えられます。

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