2013.05.22

【Webマガジン Vol.4 – May 2013】ダイヤモンド合成単結晶の応用展開とその未来

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コーンズテクノロジー編集部
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研究者、技術者の層の厚さが想定外のビジネスチャンスを産む

– でもある意味、ダイヤモンド以上の材料はないということですよね。ですから、そういう方向でいうといつまでもチャレンジングターゲットな材料のままなのか、使いこなして本当にデバイスを作るときが20年、30年後には来るのかと。

【 小出 】   私はGaN系材料を学生時代から研究していたのですが、こんなに工業的に成功するとは思ってもみませんでした。あの当時GaNをやっていて散々叩かれましたが、その状況からここまでメジャーに這い上がるのを見ていますし、SiCの発展も傍らで見ています。だから私は良いものは良いという印象を持っています。例えば半導体レーザーが出来た1970年ごろに、誰もこんなものが何に応用できるのかわからない、殺人光線かと揶揄されました。それがコンパクトディスクや光ディスクが登場した瞬間にバラ色に転換しました。だから、例えばシリコンのパワーデバイスを置き換える目標で進んでいって、置き換えるビジネス分野が出現するあり方もあるでしょうし、また作ったデバイスが思わぬところから市場が出現するという可能性や驚きもあるんですよね。

– そういうのが出てくる可能性が十分にあるということですよね。

【 小出 】  まあ、そういうふうに常に思いたいです。

【 藤森 】  可能性はありますよ。さっきから加工技術が云々と申し上げたのですが、やっぱり技術の材料を使いこなしていくためには進歩のバランスみたいなのが大事で加工技術とか、あるいは素材があるかとか、それでなければダメだというアプリケーションが上手く見つかっていくかといったことが凄く大事なわけなんです。特にエレクトロニクスの世界というのは僕が良く言う言葉でいうと「製品に旬がある」。その旬のときに出さないと製品が日の目を見ないわけです。

  「製品には旬がある。そこに間に合うようにいろんな総合技術がぱっと出来ないといけない。」

  例えばダイヤモンドのヒートシンクだって1990年ぐらい代から2003年か4年くらいまでは物凄く使われたわけですが、今は全く使われていないわけですね。その時期に物がなければいけない。ダイヤモンドSAWフィルタ(表面弾性波フィルタ-Surface Acoustic Wave filter)なんかは、1998年に出したんだけれど95年に出ていたら全然話が違っていた。世界はもう全く違っていたはずです。多分そのころメインの幹線で引いた2.5ギガの光ファイバのラインに全部使われていたと思うんですけれど、それが出来なかった。3年遅かったから出来なかった。そういう旬がやっぱりどうしてもある。そこに間に合うようにいろんな総合技術がぱっと出来ないといけないんですね。

ダイヤモンドは残念ながらまだ引き出しが少なくて何かのときに困ったときにじゃあ、これならこうしたらいいんじゃないか、ああしたらいいんじゃないかっていう選択肢が非常に少ない。そこは今からもっと研究者や技術者の層がより厚くなることによってより大きな進歩が出来るんじゃないかというふうには思う。その為にも新しい応用をどんどん見せていかないといけないところがあります。

– 分かりました。でもそういう層の厚さという意味ではやはり日本が一番なんじゃないですか、国としては。

【 藤森 】  多分そうだろうと思いますけれども。

【 小出 】  私もそう思います。学会を見てもこういうエレクトロニクス分野に積極的に挑戦しているのは、日本であるような気がします。

  「研究者や技術者の層では、日本は、間違いなく一番層の厚い国の一つである」