2013.05.22

【Webマガジン Vol.4 – May 2013】ダイヤモンド合成単結晶の応用展開とその未来

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コーンズテクノロジー編集部
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ダイヤモンドは非常にオープンな材料である

– 放熱材としてのダイヤモンドは、どういうふうに使われているのでしょうか?

【 藤森 】   ヒートシンクと言われているものです。ダイヤモンドは2000W/mKありますから、最も大きな物質だということは間違いない。こういうものに対抗する材料って言うのは、アルミナイトライドとかSi、シリコンとか、Cu-W(銅タングステン)といった材料です。

ダイヤモンドの一番の問題は、熱膨張係数がかなり低い、シリコンとかガリウム砒素とかそういうデバイスの材料と比べると小さいという問題があって、この小さいか、大きいかというところは結構クリティカルなところがあって、半導体材料側に圧縮が掛かるか引張りが掛かるかという問題がある。今の場合ダイヤモンドは、半導体材料に引っ張りが掛かっちゃうという問題点があるわけです。こういうことから考えると使える大きさが限定されるということがあるけれども、やっぱりこの熱伝導率が高いということで使いたいというリクエストが結構多いわけですよ。

一番の問題点は、そこへ来るとお値段ということになる。それを克服するためのコンセプトを我々としてはいろいろと考えているというわけです。我々が今やっているのは、割りと薄いダイヤモンドをそういうものに使えないかということで50ミクロンのダイヤモンドを使っても十分なヒートシンク効果が出るんじゃないかと思っているんです。シュミレーションするとダイヤモンドって、ほとんど横方向の熱分布を持たない。ダイヤ板のある場所をちょっと加熱すると全部が同じ温度になってしまうというくらい優れているわけですよね。

  もう一つオプションがあってカーボン12だけにすると、更に1.5倍くらいに熱伝導率が上がるっていう話がある。これは小出さんのところの方が今、研究を一生懸命やっていらっしゃる。それが本当に実用化出来れば、非常に面白いことになると思います。そこまで究極のものが、次の候補としても用意されているという意味では、ダイヤモンドは非常にオープンな材料だと思います。値段を電子部品の体系に合わせるということが、まず第一になりますので、ある程度マスプロダクションに耐えられるようなコンセプトを作っていかなければならないというのが今の私の考えです。

  「ある程度マスプロダクションに耐えられるような コンセプトを
作っていかなければならない。 」

– こういう放熱板みたいなもの、我々のほうもSP3社が作っている多結晶の板みたいなのを取り扱っているわけですが、他結晶に比べての単結晶のほうが更に放熱性がいいということ?

【 藤森 】  普通にいくと3倍くらい熱伝導度があると思いますね。あの多結晶で薄いのを普通に作ると単結晶に比べて4分の1くらいしか熱伝導はないと思います。それに対して我々の作っている技術は、完全な単結晶ですから2000W/mKちゃんと出るのでその分のメリットはあります。その4倍熱伝導率があるっていうことが使う側にとって本当の意味があるかどうかっていうことです。そこがもう全てですね。 値段は、多結晶のダイヤモンドに比べて4倍になるってことはないと思います。

– あ、そうか、薄くても効き目は同じくらいあるということか。

【 藤森 】  多結晶のダイヤは薄くするとどんどん熱伝導度は悪くなる。成長初期が悪いダイヤモンドしか出来ませんから薄くなればなるほどまずくなる。我々のほうはそうじゃなくて薄くなっても何も変わらない。それが大きなメリットですね。

単結晶の市場は相当大きいものになるかもしれない

– 単結晶合成ダイヤモンドのアプリケーションとしては、何がこれから一番大きくなるというふうにお考えでしょうか?

【 小出 】  私は半導体デバイス屋だから、これまで述べてきたパワーデバイス、つまりダイヤモンドがエレクトロニクス分野に入ってくことを望んでいます。ここ最近の応用分野を見ているとやっぱり工具、新材料に対する加工分野、先ほどのCFRPが代表格です。期待という面では革命的ですし、それを加工できるのはやはり単結晶ダイヤモンドしかないわけですね。ダイヤモンドの研磨が良い性能を生み出すのであれば、工具、加工の切削工具分野に市場性があるように素人目には見えます。

【 藤森 】   確かに将来的にも使われるし、トータルマーケットとしては、工具は結構あると思うのですが、我々としてはもう少しいろいろなところで使ってもらいたい気持ちが強いわけです。僕が一番期待しているのは、最終的にはデバイスを何とかしたいというのも当然あるんですけれども、光学的な用途なんかでもひょっとすると相当大きな使い方が出来る可能性があります。光学部品としてシンクロトロンのところで使っているモノクロメーターっていうのがあるんですが、これを今まだ、出せるのが住電のIIaって言われている高純度の単結晶だけしかないんです。シンクロトロンの人達は、本当は全ポートにそれを付けたいんですね。それを全部付けるとどう少なく見積もっても全世界で20億円/年くらいの市場がある。これからもっとシンクロトロンが増えていくかもしれないので、そうなるともっと話がある。

その一つだけでもそういうことが言えるわけで、光学的なこととかは結構ありうる話ですね。さっきのヒートシンクの話もデバイスの熱管理というか、サーマルマネジメントにもダイヤモンドが、きちんと選択肢として示せるようになっていけば十分にその役に立つことがたくさん出来るんじゃないかと思っています。旧来の切削工具、ダイス、ドレッサーとか言われるような耐摩耗性を使うもの以外の用途っていうのは、意外とたくさんあって、結構早い時期にどんどんそれが結実してくるような感じがします。今が丁度過渡期かなぁと、そういう意味での新しいものが出てくるところに来ているんじゃないかと。

あと、ここに書いていないけれど宝石っていうのがもう一つある。そっちのほうもかなりもう世の中に出回っているという話が最近良くいろいろなところで聞えてきます。そういうことも考慮しますと、人口合成単結晶の中でも気相合成単結晶の市場というのは、相当大きいものになる可能性は既にあるのではないかと思います。僕も会社始めて3年ちょっと経ちましたんでもう一遍市場を見直さないといけないかなというふうに思っているところです。