2013.05.22

【Webマガジン Vol.4 – May 2013】ダイヤモンド合成単結晶の応用展開とその未来

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コーンズテクノロジー編集部
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単結晶工具でなければできないアプリケーションとは

– ダイヤモンドのアプリケーションの中に昔からあるので、例えば工具があると思うのですが、単結晶の工具でなければできないアプリケーションというのにはどういうものがあるのでしょうか?

【 藤森 】   初めに単結晶の工具がある程度量を使われ始めた案件の一つは、レーザープリンターの光をスィープするためのミラーを、モリブデンとかニッケル鍍金をしたものを削るんですが、それがかなり大量に使われた一番最初だったと思います。単結晶でないとミラー面が綺麗に出てこない。常識的に考えると研削したほうが綺麗になるんじゃないかと思われるんですが、それは全然違っていて研削をすると毟れるのでかえってピカッとならないわけなんです。

最近は、金型だとかそういうものの加工なんかでも単結晶工具は、どんどん使われている。もっと歴史をたどれば単結晶のダイヤモンドを使うという意味で言うと、線引きダイス、金属線を細くするためにやっていくダイスですね、これも非常に硬い金属の場合は、ダイヤモンドを使わないと出来ない。だけど、簡単に言うけれど、穴開けてダイスの穴をきちんとした形状にするのは、ダイヤモンドの場合、逆に大変な意味がありますから、本当の意味での精度の良い線を引くことになってきたのはごく最近の話で、一番大事なのは、ICのボンディング用の金線です。あれがだんだん細くなってきて20ミクロン以下。そのぐらい細くなってくると単結晶でなければ削れない。 ところが今、もっと違うコンセプトが出てきて、単結晶でなくて線引きしようという話がある。けれども、途中段階としては、単結晶でないと絶対に20ミクロン以下の細い金線は作れないというのが市場としてずっとあった。

 


単結晶の応用展開

 

– そこに使われているのは、どうやって作った単結晶ダイヤモンドなのでしょうか?

【 藤森 】   一番最初は、勿論天然。途中から超高圧ので、ずっと使われているわけです。超高圧のほうが、安定性がありますからね。

【 小出 】  最近出たスマートフォンの例でいうと、筐体(きょうたい)ボディがアルミニウムで出来ている。アルミニウムで出来ている金属を磨くときに、最後にダイヤモンドで仕上げる一番の特徴は何ですか?

【 藤森 】  簡単にピカッと出来る。非常に早く加工が出来ますね。安定した状態で。アトミックレベルに近いところぐらいまで単結晶工具っていうのは仕上げますから。

【 小出 】  私の質問になってしまいますけれど、それは日本の匠技術かどうかです。昔は人間国宝のような技術はダメで、工場で誰でも出来るような技術にまで落とし込まなければいけないと言われていました。でも今は、総合科学技術会議議員の方も仰っているのですが、第三国に簡単に真似されない、追随を許さない日本の匠技術を生み出さなければいけない。

【 藤森 】   もちろん、日本はそういう工具を作る技術は優れていますが、ただ、間違えていけないのは、そのスマートフォンの話は全然数が大きいわけ。そんなことを気にして作っていたらはっきりいって作れない。そういうレベルをはるかに超えているんです。要するに桁が違う。だからもうこういうのを作るためには自動機で作るつもりがないと本当をいうとダメなんです。一足飛びにそういう段階に入っちゃっているという感じですね。

– CFRP(炭素繊維強化プラスチック-Carbon Fiber Reinforced Plastics)の加工にはダイヤモンドが向いているとか、必ずしも単結晶ではないかもしれませんが、それはあるんですね?

【 藤森 】  それはまあ、ある。ボーイング787で有名な話になった例ですよね。

【 小出 】  CFRP自身が炭素繊維、これも日本が世界を席巻している材料で、その加工も日本が席巻しています。最近、真似できない新材料として良く取り上げられるサクセスストリーの一つです。

  「CFRP、これも日本が世界を席巻している材料で、
その加工も日本が席巻しています。」

【 藤森 】  自動車がCFRPに変わる可能性が十分ありますから、技術としては大事ですよね。今、回転工具系がほとんどなわけですね、エンドミルとかドリルとかに付けているんですけれども。これはコーンズさんが扱っておられるフィラメントCVDで付けるのが一番合理的で今のところこの方法になかなか勝てるものがないと僕は思ってるんです。CVDの技術としてダイヤモンドが出て行く用途としては一番多い、売上から考えても一番多いと言ってもいいと思いますね。

  でも、切削工具としてダイヤモンドの一番大きな欠点は、鋼が削れないわけです。今、世の中の削っているものの98%以上が鋼ですから、その一番大きなマーケットに入ることがなかなか難しい。超硬合金の切削工具とかとは、やはりそういう点が違う。ただ極一部ですけれどもバリ取りとかには、ダイヤモンド単結晶が使われる用途もあります。

【 小出 】    鋼、鉄ですね。その使えない理由は、鉄と炭素が反応してしまうということですね。

【 藤森 】   反応の問題と耐熱性の問題が少しあります。
(編集 注:鋼を削るときに発生する刃先の温度は800度以上の高温となるため、鉄とダイヤモンドの炭素が反応してダイヤモンドが侵食されてしまう。)