2014.10.22

【Webマガジン Vol.12 – Oct., 2014】航空機開発におけるテレメトリー技術

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コーンズテクノロジー編集部
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テレメトリー上のデータ

テレメトリー上に流れるデータの形式で、多く使われているのがPCMフォーマットです。これは米国の国家規格であるIRIG(Inter Range Instrumentation Group)により規定されているフォーマットです。IRIG Standard 106の中のChapter 4で示されるデータフォーマットがPCM(Pulse Code Modulation Standards)で、その内容は一般に公開されています。そしてそのドキュメントも、webページから誰でも入手することができます。

データは1と0の2値で組み合わされる、デジタル信号です。ビット化されたデータは、ワード単位で数値化され、マイナーフレーム、メジャーフレームとグループ化されます。そしてメジャーフレームの単位で繰り返されます。そのため、測定のサンプリング周波数は、PCMのボーレートと、マイナーフレームの長さで決まってきます。

しかし計測するデータは、種類によって必要なサンプリング周波数は異なります。音や振動などは早い周期が必要ですので、温度のようにゆっくり変化するデータまで同じ周期を使うと無駄になります。そのため特定のマイナーフレームのみに入れるデータや、各マイナーフレームに入れるデータ、そして一つのマイナーフレームの中に複数入れるデータなど配分を変えて、サンプリング周波数を調整しています。


ADAS社のMAGALIソフト
データは数値として解析されるだけではなく、
ビジュアルで表示して、直感的な判断に役立
てられる。ADAS社のMAGALIソフトは、基礎
解析から3D表示までをサポートするCOTSの
ソフトウェア。

 

テレメトリーを支える通信技術

  飛行する航空機からのデータは、電波にのせて伝送されます。しかしその伝送は、常に安定しているわけではありません。飛行機の距離や挙動、周辺のノイズ、障害物、天候など、さまざまな要因が通信の障害となります。

デジタルデータを電波で送信するには、まずはHiとLoのレベルで符号化し、使用できる電波の範囲内で変調する必要があります。また使用できる電波の周波数によっても、伝送できるデータ量や通信できる距離が変わってきます。

これらの組み合わせは時代により進歩してきましたが、絶対的に有利な環境はなく、その時の条件や機材の性能、使用できる電波環境により異なってきます。そのため現在の多くの送受信機では、プログラミングで符号化や変調の方式を、使用者の要求に応じて簡単に変更できる構造になっています。また条件が許せば、2つの周波数を同時に使うことで安全性を確保する場合があります。

 


最新の技術を詰め込んだテレメトリー
レシーバー。ソフトウェア無線の採用で、
高い性能と拡張性を併せ持つ。

 

  また最新の機材では、コンディションに応じて、符号化や変調方式を細かく切り替えながら、最適な通信を行うものもあります。この場合、送信側と受信側の同期は独自の方式を採用しているので、機材のメーカーを統一する必要があります。

受信側のアンテナ性能も、安定した通信の為には重要なファクターです。長距離の伝送では、指向性の高いアンテナを航空機のいる方向に向ける、トラッキングアンテナを使います。また2つ以上のアンテナを使い受信するダイバーシティも、よく使われる技術です。離れた位置に置いた2つのアンテナを使う、空間ダイバーシティは外観上でもわかりやすいですが、1本のアンテナの受信部で、2つの偏波に分けて受信する偏波ダイバーシティもあります。

また大がかりなものでは、数十キロ離れた場所に設置したアンテナからも、ネットワーク経由で信号を集め、1つのデータとして処理するシステムも、一部では使われています。