2014.10.22

【Webマガジン Vol.12 – Oct., 2014】航空機開発におけるテレメトリー技術

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コーンズテクノロジー編集部
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テレメトリーを構成するアイテム

試験飛行で収拾したい情報を計測するために、各部にセンサーを配置しますが、これらの計測値はいくつもの機材を経由して、地上のモニター員に届けられます。ここではその経路と経路上にある機材の役割をご紹介します。


A. 機上設備

  • a-1 センサ
    目的に応じたセンサーを測定箇所に取り付けます。振動、歪み、温度などのベーシックな計測から、エンジンの回転や操舵の状態などの機体の状態、高度や速度などの飛行の状態など、試験の目的に応じたさまざまな情報が取得されます。
  • a-2 シグナルコンディショナー
    センサーを接続して、計測値をデジタル信号に変換する装置です。センサーが必要とする電源を供給する機能も持ちます。測定精度を上げるためには、小型のユニットをセンサーの近くに配置することが求められます。
  • a-3 マルチプレクサー
    複数のシグナルコンディショナーで収拾したデータを、一つのデータに集約する装置です。システム化されたシグナルコンディショナーでは、マルチプレクサーの機能を併せ持つものもあります。
  • a-4 変調器
    デジタルのデータを電波として送信できるように、デジタル信号を符号化し、RF(Radio Frequency)に変調します。ベーシックなFM変調から、多くのデータを送れる最新の変調技術など、目的に応じて様々です。
  • a-5 送信器
    変調された信号を、長距離伝送に必用なパワーに増幅します。変調器と一体化した小型のユニットを使う場合もあります。
  • a-6 送信アンテナ
    信号を電波に乗せて地上に送るためのアンテナです。通常は機体の下方に付けられますが、アクロバットな飛行を行う場合や、空港内での安定した通信確保のために、上部や翼に付けられる場合もあります。


米国TTC社製品を中心に組み立てた、
機上システムのイメージ。

 

B. 地上設備

  • b-1 受信アンテナ
    多くの場合、移動する航空機を追尾するトラッキングアンテナを使用します。航空機側のアンテナが固定アンテナとなるので、スペースに余裕がある地上側をトラッキングアンテナとして、通信距離を稼ぎます。恒久的に設置する固定型や、試験の時のみ設置する移動型があります。
  • b-2 レシーバー
    アンテナで取得したRF信号から、目的の信号を抜き出すチューナーを備えます。複数のレシーバーを搭載して、ダイバーシティ機能を使用するケースもあります。
  • b-3 復調器
    レシーバーで取得したRF信号(または処理に適した周波数に変換したIF信号)から、デジタルデータに変換します。
  • b-4 モニター装置
    デジタルデータを、視覚的にわかりやすい方法で表示します。古くから使われてきた、ペンレコーダーによるチャート表示や、最新の3Dグラフィックを使ったビジュアル表示まで、時代や目的に応じて、様々なモニター方法が存在します。


Sバンド帯の電波を受信する米国TelAntCo社
のトラッキングアンテナ。
写真は固定局用で、車両に積んで移動できる
タイプもある。

 

C. その他の付帯設備

  • c-1 データレコーダ
    計測の結果をレポートしたり、後で詳しく解析したりするために、データを記録する必要があります。通常はテレメトリーでの通信障害を回避するために、機体側にデータレコーダを搭載します。しかしバックアップや、レコーダーを搭載できないような計測の場合、地上側にレコーダーをセットする場合もあります。
    記録媒体は古くはペンレコーダーや磁気テープへの出力を使っていましたが、現在は振動などの影響を受けにくい、半導体メモリが主流になっています。


フランス/ドイツのゾディアック社は、航空機
搭載用に特化した、  さまざまなデータ
レコーダーを供給している。