2025.01.07

サーマルカメラとそのグローバルリーダーTeledyne FLIRとは?サーマルカメラの可能性もご紹介

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サーマルカメラとそのグローバルリーダーTeledyne FLIRとは?サーマルカメラの可能性もご紹介

撮影対象物の熱を感知して撮影するサーマルカメラはさまざまな分野で活用されており、今後も多くの利用可能性を持っています。この記事では、サーマルカメラの特徴や仕組み、活用事例、活用が期待される分野などをご紹介します。

 

 

サーマルカメラとは

サーマルカメラとは、対象物の熱を感知して撮影するカメラの総称です。名前のサーマル(Thermal)は「熱」を意味します。

一般的なカメラは照明や太陽光などの光源がなければ撮影できない可視光カメラと呼ばれますが、一方、サーマルカメラは対象物が放つ熱自体をとらえるため、暗闇のなかでも撮影できます。くわえて、サーマルカメラは撮影対象と非接触で熱の測定ができ、温度管理などの身近なところから国境警備まで、幅広く活用されています。

 

 

サーマルカメラ、サーモグラフィカメラ、赤外線カメラの違いは?

まずサーモグラフィ、サーモグラフィカメラとは

サーモグラフィという言葉がありますが、サーモグラフィは、サーマルカメラの映像を表面温度ごとに色分けして表示することで、対象物の表面温度を視覚化する装置です。撮影対象物の温度を疑似カラーで表現し、高温箇所や低温箇所などの画面内の熱分布をひと目で理解できるようにします。そのため、サーモグラフィ機能のあるサーマルカメラを指してサーモグラフィカメラとも呼びます。

 

サーマルカメラの原理をつかったサーモグラフィ

サーマルカメラは、対象物の赤外線を捉えることで撮影する仕組みです。絶対零度以上の温度の物体は、赤外線と呼ばれる人の目には見えない光(電磁波)を放っています。この赤外線は暗闇のなかでも検知が可能です。また、放出量は物体の温度に比例しており、高温になるほど多く放たれます。

サーマルカメラは、その赤外線を捉えることで光のない場所でも対象物を撮影でき、サーモグラフィは赤外線の放出量から温度の推測を実現しています。

 

赤外線カメラとサーマルカメラの違い

サーマルカメラと混同されやすい製品に赤外線カメラがありますが、赤外線カメラは、文字どおり赤外線をとらえることのできるカメラの総称であり、サーマルカメラは赤外線カメラの一種となります。

 

 

サーマルカメラの活用事例とは

続いて、サーマルカメラの代表的な活用事例をご紹介します。

 

スマートフォンやタブレット端末への搭載

サーマルカメラは、専用のアプリや機材を利用することで、スマートフォンやタブレット端末でも使用できます。例えば、Teledyne FLIR社のFLIR ONEと呼ばれるアプリをデバイスにインストールし、FLIR ONE Proなどの外付け機器を接続すると、本格的な赤外線撮影をリーズナブルに導入できます。

 

変電所などインフラ設備の点検

変電所や石油化学プラントのような施設においては、ほんの少しの対応の遅れが深刻なインシデントにつながる恐れがあります。その点、昼夜を問わず温度監視ができるサーマルカメラなら設備や部品の異常発熱を検知し、インフラ設備のトラブルを常時感知できます。

また、スペクトル波長フィルタリングを搭載した赤外線カメラは、目に見えないガスを可視化し、ガスの漏洩箇所の特定にも活用されています。ガス漏れ検知用赤外線カメラの活用により、安全性と効率性の高い「スマートLDAR」(ガス漏れの検知・修復機能)プログラムを石油・ガス業界へ導入することができます。

 

国境や海上の警備・監視

国境や海上の監視もサーマルカメラの活躍の場です。国境では、夜間だから監視を中断するというわけにはいきません。暗闇のなかでも対象を撮影できるサーマルカメラの特性を生かせば、24時間365日、国境や海上の安全は守られます。

 

生鮮品の温度管理

生鮮品は、その品質・鮮度を保つために厳重な温度管理が必要とされます。一方、衛生面の観点から可能な限り不要な接触を避けることも重要なため、対象物に触れず温度計測ができるサーマルカメラ(サーモグラフィカメラ)が重宝されています。

 

交通監視

サーマルカメラは、世界中の交通インフラの運用においても利用されています。夜間やトンネル内の事故の検知はもちろん、逆走のような異常のある車両を速やかに発見し、関係各所への通報をおこなうことができます。

 

 

 

サーマルカメラ導入時のポイントとは

サーマルカメラはさまざまな形で活用できるデバイスですが、導入の際に知っておくべき、検討しておくべきポイントがあります。

 

観測できる範囲を知っておく

サーマルカメラは赤外線をとらえる特性上、以下のような観測範囲の制限があります。

 

  • 対象物に角度が付いている場合は計測精度が落ちる
  • ガラス越しに温度を測定できない
  • 対象物の内部温度は測定できない

 

また、モデルによっては近距離でなければ正確に温度を計測できないものもあります。まずはサーマルカメラの撮影・測定対象物が何か、どのようなシーンで活用するのかの見極めが必要です。

 

機能が上がるほど高額に

そしてサーマルカメラ導入時の障害となりやすいのが価格です。高機能・高品質なサーマルカメラは、1台あたり20万円以上ということも十分あり得ます。そのため、繰り返しになりますが何をどのように使うかの見極め、必要な機能・スペックのサーマルカメラを選択する必要があります。

 

 

サーマルカメラのグローバルリーダーのTeledyne FLIR社とそのサーマルカメラとは

前述のとおり、サーマルカメラには検討しておくべきポイントがありますが、Teledyne FLIR社は、さまざまなニーズを満たす製品を提供しています。

 

Teledyne FLIR社とサーマルカメラ

Teledyne FLIR社は、サーマルカメラをはじめとする赤外線技術に関して多くの知見を積み重ねてきた企業です。1978年の創業後、40年以上にわたり、高性能かつ低価格な撮影システム・機材の研究を進めてきました。

Teledyne FLIR社のカメラは、悪天候などの過酷な環境下においても高精度な撮影を期待できるとして、政府・防衛機関、産業、商業などの市場を中心に世界中で広く使用されています。現在ではサーマルカメラの製造・販売において世界トップシェアを誇り、世界中に合計3,000人以上の専任スタッフを雇用しています。

 

コンパクト・高コストパフォーマンスの赤外線カメラモジュール「Lepton」

Teledyne FLIR社の赤外線カメラモジュール Leptonは、一般的な赤外線カメラの10分の1という驚異的な低価格を実現したモデルです。解像度は160 x 120(Lepton2.5は80 x 60)と控えめながら、初期費用を抑えながらサーマルイメージング機能を体感できます。水平角度は50°、57°、95°の3種類の選択肢から選択可能です。

>>>赤外線カメラモジュール Lepton

 

低消費電力性を兼ね備えた、高性能可視+赤外線2眼カメラモジュール 「Hadron 640 R」

高性能可視+赤外線2眼カメラモジュール Hadron 640 Rは、可視カメラ(光を利用して撮影する通常のカメラ)と赤外線カメラの両方を搭載した2眼カメラです。小型のドローンでも搭載しやすい小さいカメラで、消費電力を抑えることで飛行時間に影響を与えにくくなるよう設計されています。それでいて、飛行中は逆光や暗闇下においても高品質な赤外線・可視画像が撮影できます。

Hadron 640 Rは高い機動力と、優れた撮影能力が評価され、米国陸軍の短距離偵察(SRR)のプログラム・オブ・レコードにて受賞したドローンに搭載が決定しました。同時にTeledyne FLIR社の人工知能(AI)組込みのソフトウェアも採用されており、米国陸軍では5,000台以上の導入が計画され、次世代の偵察任務における重要な役割を担っています。

>>高性能可視+赤外線2眼カメラモジュール Hadron 640 R

 

高度な画像処理と業界標準の通信インターフェースを持つ、赤外線カメラ 「Boson」 カメラモジュール

赤外線カメラ Boson カメラモジュールは、低消費電力と高品質の両立を追求したモデルです。その特徴は、拡張可能な遠赤外線映像システム「映像処理アーキテクチャXIR™」にあります。無人航空機にも採用されるほどの高品質な画像・ビデオの解析が可能であり、多様なレンズオプションとの組み合わせにより用途に応じた構成を実現しやすい点でも優れています。

>>赤外線カメラ Boson カメラモジュール

tekedye_flir_boson

 

検出・コントラスト・温度分解能が進化した、高性能非冷却LWIRカメラモジュール 「Boson+」

高性能非冷却LWIRカメラモジュール Boson+は、前述のBosonの進化版にあたるモデルです。Bosonと同じ筐体・サイズですが、検出性能、コントラスト性能、温度分解能などが進化しています。実務上の問題となりやすい映像遅延の低減にも配慮されており、重要設備の監視や防衛の用途にも適応します。多様なレンズオプションが選択できる長所はBosonと同様です。

>>高性能非冷却LWIRカメラモジュール Boson+

 

見えないガスを可視化する、ガス検知用赤外線カメラ「Gシリーズ」

施設によっては、定期的なガス漏れ検査が必要な接続部品や継手が何千個もある場合があります。しかし、実際にガス漏れが発生する箇所は、これらの部品のごく一部にすぎません。従来のスニッファーと呼ばれるガス探知機を使いすべての部品を検査するには、膨大な時間と労力がかかり、また、検査担当者が安全でない環境に置かれる可能性があります。

FLIR社のガス検知用赤外線(OGI)カメラGシリーズは、目に見えないガスが漏れる瞬間を可視化できるため、スニッファー探知機よりも素早くかつ確実に排出ガスを発見することが可能です。FLIR社のGシリーズを使えば、製品のロス、収益の損失、罰金、安全上の問題につながるようなガス漏れを記録することができます。

天然ガス採掘事業から石油化学事業、発電所まで、フリアーシステムズのOGIカメラをガス漏れ検知・修理(LDAR)プログラムに導入した企業は、年間1000万ドル以上の製品ロスを削減した事例もあります。
>>ガス検知用赤外線カメラGシリーズ

ガス検知用赤外線カメラ Gシリーズ

 

今後サーマルカメラの活躍が期待される業界とは

最後に、今後サーマルカメラの活躍が期待される業界をご紹介します。

 

自動運転でのサーマルカメラへの注目

日本国内でも自動運転技術が段階的に導入されていますが、先進運転支援・自動運転においてサーマルカメラは主要な役割を担います。

可視カメラが活躍しづらい悪天候下・夜間・日陰・夕暮れ・日の出・直射日光やヘッドライトのまぶしさなどの視認性が低くコントラストの高い条件においても、サーマルカメラであれば人や動物といった障害物を高精度に検知し、適切な運転支援を実現します。現在、自動運転がより身近になるにつれ、サーマルカメラは自動運転の装備として注目され、今後、広く浸透していくと考えられています。

 

スマートビルティングにおけるサーマルカメラの活用

昨今、AI・IoTなどの技術の進化にともないスマートビルディングの思想が注目されていますが、サーマルカメラはその具体的な設備として重要な役割を担います。

可視カメラは映像の鮮明さが大きなメリットですが、それゆえ従業員のプライバシー保護に関して懸念があります。一方、サーマルカメラ(サーモグラフィ)の映像は個人の識別が難しく、従業員の心理的負担となりにくいのが長所です。そのため、サーマルカメラを使って行う会議室内の人数や使用状況を適切に確認・管理するなどの活用が進んでいます。

 

医療とヘルスケア分野におけるサーマルカメラの可能性

スマートビルディングにくわえ、サーマルカメラ活用は、医療・ヘルスケア分野での活用も期待されています。

具体的には、病院や介護施設では、病気の発作などをいち早く発見するために、入院患者や施設利用者の定期的な見守りが欠かせません。しかし、見守りといえどもトイレなどを含め、プライバシー保護の観点から可視カメラによる監視は望ましくない場所が多々あります。そのような際に、サーマルカメラを活用すれば、プライバシーに配慮されるべき場所にも抵抗なく導入できます。たとえば他者の視線が届かないトイレなどで、転倒などの異常姿勢を速やかに検知できるようになり、従来は発見が難しかった不測の事態に備えることができるようになります。

 

防犯分野におけるサーマルカメラの応用

以前より強盗被害のニュースの増加とともに、防犯が社会的関心事項となっています。今後、その防犯分野でもサーマルカメラの活用がより身近になっていくと考えられます。

赤外線をとらえるサーマルカメラの夜間や悪天候下でも不審者の様子を撮影できる強みを活かしつつ、サーマルカメラとインターフォンを組み合わせたり、AIを含めた他の技術と組み合わせたりすることで、自動で通知や通報をおこない、犯罪被害のリスクを低減できると期待されています。

 

 

まとめ

サーマルカメラは対象物の熱を感知するカメラであり、その仕組みには赤外線が利用されています。暗闇でも撮影でき、プライバシー保護にも役立つなどの特徴があり、多くの場面で活用が進んでいます。

社会のニーズの高まりのなか、サーマルカメラ自体も進化を続けています。私たちの日常生活の安心・安全にもつながる技術であり、今後もより広い分野で導入が進んでいくことでしょう。

 

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