2015.03.22

【Webマガジン Vol.14 – Mar., 2015】熱物性-熱伝導率と物質・材料

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コーンズテクノロジー編集部
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実は身近な熱物性

普段、熱物性を気にしたことはありますか?恐らくほとんどの方は、熱物性なんてよくわからないし知らなくても関係ないよ、という回答だと思います。実は知らず知らずのうちに私たちは暮らしの中で様々な熱物性値に関わっているのです。外断熱の快適な住居で朝を迎え、熱伝導の工夫を凝らした炊飯器でおいしいご飯が出来上がり、最新ニュースをチェックするスマートフォンやパソコンには高度な熱設計が施されています。帰宅後には冷めにくい浴槽で疲れを癒やして一日が終わります。このように、多くの身近な製品には、熱を逃がす、貯める、止める、流すといった工夫が行われているのです。

いわゆる熱物性の中には、熱エネルギーに関係するいくつかの物性値と特性値が含まれます。物性値として代表的なものは、熱伝導率比熱容量熱拡散率の3つです。さらに、温度に依存し長さ・体積の変化を表す熱膨張率も熱物性値の一つです。一方特性値とは材料の大きさや対流の影響などを含んだ実効的なエネルギー移動を示すときに利用される値で、熱伝達率や熱抵抗値、熱貫入率などがあります。ここでは、物質・材料の中を流れる熱エネルギー移動の大小を表す物性値である熱伝導率と物質・材料の関係に焦点を絞ってお話したいと思います。

 

高い熱伝導率、低い熱伝導率

熱伝導が高いということは、物質の中に熱エネルギーを流しやすいことを表します。また同時に温度が伝わる速さ(熱拡散率)も一般的に大きくなります。図1は、元素の熱伝導率(室温)を原子番号順に並べて示したものです。赤い丸のプロットは金属元素、青い丸は非金属元素です。非金属元素のうち熱伝導率がほぼ0の元素は気体です。一口に金属といっても熱伝導率には大きな幅があることがわかります。熱伝導率が高い順から、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)であり、これらは400 W/(mK)前後の熱伝導率を持ちます。一方、Mn(マンガン)は7.8 W/(mK)、Bi(ビスマス)は8 W/(mK)、レアアースとして知られるランタノイド(原子番号57~71)はYb(イッテルビウム)を除いて20 W/(mK)を越えません。

 


図1 元素の熱伝導率を原子番号順に並べた図
熱伝導率の高い元素は金属で占められている。

このような熱伝導率の違いは何が原因でしょうか?図2は、横軸に電気伝導率を取って元素の熱伝導率をプロットし直しました。金属の熱伝導率はきれいな直線上に並ぶことがわかります。このことから、電気の良導体は熱の良導体であるという普遍的な関係が導かれます。この関係は、Wiedemann-Franz則として知られており、金属中で熱エネルギーを伝搬するものは自由電子であることを示しています。


図2
元素の熱伝導率を電気伝導率に対して並べると、金属元素はある直線状に
並ぶことがわかる。すなわち電気伝導率が高いほど、熱伝導率も高い関係にある。