2013.03.22

【Webマガジン Vol.3 – Mar., 2013】人工ダイヤモンドの可能性

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コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
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新しい原理を産むための発想のジャンプへ

– そのあたり、小出さんはどうですか、今研究されていて、最終的な理想系のこういうものを作る為にやっているんだというようなところからいきますと。

【 小出 】  やはり、エレクトロニクスとしてはパワーデバイスと思います。先ほど述べた、現在SiCの目指しているところを置き換えていくスタイルが一つ。更に性能が良くなると良いですね。ただし、ダイヤモンドはSiCよりもいわゆる半導体のテキストブックにあるような原理がちょっと使いにくい欠点があって、ダイヤモンドの特徴を生かしたFET(電界効果トランジスタ)やトランジスタスイッチデバイスに持っていかなければならないことがもう一つあります。

【 藤森 】   今、小出さんが言われたのは非常に正しい見解だと思います。少なくともダイヤモンドが持っている半導体材料としてのディスアドバンテージの一つは、今のプロセスのやり方でやっていこうとすると、SiO2の絶縁膜が使えないというところに物凄い大きな違いが出てくる。MOS構造が簡単に出来ないということになります。だから「そういうものに頼らない新しいコンセプトをやっぱり作るくらいの気概がないと」と僕はいつも言っているのですが、そこまで行こうと思うと相当、発想のジャンプがいるわけですよね。だからそういうことの出来るぐらい状態まで早く整えないといけない。

– まだその絶縁材は見つかっていないということですね。

【 小出 】   まだ見つかっていないと思います。今学会的には原子層堆積法で作製したアルミナ(Al2O3)が意外に高性能であることが発表されていますが、まだ最終解かどうかは判りません。そういうような材料探索、組み合わせのベストなものは、何かはまだまだわかっていないと思います。

– レイヤーとしてそれこそ化合物半導体でもシリコンでも入れて放熱性を高めようとか、あるいは、矛盾するかもしれないけれど機械的特性を高めようというようなレイヤーとしての使い方のほうが先に来るんじゃないかというのはどうでしょうか?

【 小出 】   MEMSデバイスとシリコンCMOSと組み合わせて、それはUNCD(ウルトラナノ結晶ダイヤモンド-Ultra nanocyrystallaine Diamond)を応用したデバイスが発表されています。この薄膜MEMS的な使い方で、シリコン大規模集積回路デバイスへ融合する形を一所懸命アメリカは進めていますよね。そういう意味では、アメリカは柔軟でむしろダイヤ、ダイヤって、sp3ダイヤにこだわっていない進め方をしていると思います。それが本当に主流になってくるかどうかは、私には分からないです。

【 藤森 】   やっぱり、シリコンそのもので事を解決していく傾向が強いからどうしてもそういうのは、傍流になってしまう傾向があると僕は思いますね。だけどそういうのってMEMSの場合はどういう風に出てくるのかまだ分かりませんよね。でも、ちょっと最近余りウォッチしていないから、間違ったら申し訳ないんだけど、最近あまり進歩がないような感じがするんですよね。前の2000年くらいから2008年くらいまでの進歩に比べるとね。

【 小出 】  そうですね、停止していますね。多くの研究者は立体構造を作るには、DLCのほうが加工しやすいのでまずはDLCでMEMS分野に入っていくと思います。私も同僚とともに今MEMSをやっていますが、私は他との違いを出したいので“単結晶ダイヤモンド”、sp3ダイヤモンドで、MEMSデバイスを作るという方向で研究を進めています。技術的に特徴的な点は犠牲層作製技術にあります。即ち中空構造を作る技術です。私がおもしろいなと思っていた藤森さんがやっていたイオン注入してダイヤモンドから炭素に変換する、炭素に変換すると簡単にウェットエッチングによって除去できる現象を使ってMEMSデバイスを作製しています。なぜ単結晶を使うかと言えば、先ほど述べたヤング率1200メガパスカルという物性値を活かしたいのが理由です。それは一つの可能性としてどこまで行くか試したいと思っています。

 

次号 予告

ダイヤモンド合成単結晶の応用展開とその未来

  • 単結晶工具でなければできないアプリケーションとは
  • ダイヤモンドは非常にオープンな材料である
  • 単結晶の市場は相当大きいものになるかもしれない
  • 単結晶ダイヤそのもので1ミリ以下のドリルを作る技術がある
  • 研究者、技術者の層の厚さが想定外のビジネスチャンスを産む