2024.01.26

How to:FLIR Boson / Boson+の熱管理とsupplemental FFC

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コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
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 FLIR社のBoson・Boson+は、「遠赤外線非冷却型カメラ」です。Boson・Boson+が使用している遠赤外線を検出するためのセンサを、マイクロボロメータと呼びますが、感度の高いマイクロボロメータは、背面や、自分自身が発するものを含め周囲から飛び込んでくる遠赤外線も検出してしまいます。つまり、撮影したい方向を見るためのレンズが設けられている、前面方向だけではなく、レンズ鏡筒や、背面側に存在する熱源による遠赤外線放射も受け取ってしまいます。

カメラ(モジュール)として仕立てられているBoson・Boson+のような製品では、鏡筒や、背面側の発熱により発生する「外乱」を、可能な限り無視できるよう、内部で処理が行われています。このため、その内部処理を打ち消してしまうような、超えてしまうような熱源がカメラ(モジュール)近傍にあると、その影響を受けてしまいます。

Boson・Boson+の筐体は、マグネシウム合金で作られており、背面側の4つのネジ穴を通し、背面方向に排熱する仕組みをもちます。それにより、Boson・Boson+が内蔵する、映像信号処理プロセッサが発生する熱を逃がす利用方法を前提としています。この構造によって、自身の発熱による熱暴走と、自身の発熱による、撮影画像への外乱を防ぎます。

 

放熱を補助するために、トライポッドアダプタ(三脚用アダプタ)がアクセサリとして用意されていますが、Boson・Boson+をお客様のアプリケーションに応じた筐体に納める際には、放熱に関する同様の考慮が必要になります。筐体を設計するとき、Boson本体をグリップするような構造を考えがちですが、そうではなく、4本のネジを使用して後方に排熱される構造が必要になります。このトライポッドアダプタを使用して、FLIRでもキャリブレーションが行われています。


当社製作のMIPI-CTL-VPC4.0では、microUSB3コネクタを保全している金具を使わないことで、トライポッドアダプタを使用することができます。同じく当社製作のアナログビデオ出力ボードでも使用できます。

ナローFOVのBoson・Boson+の場合、口径が大きい大型のレンズになりますが、その場合、後方4つのネジだけでは保持が難しくなりますので、ご相談ください。

Boson・Boson+は、自身の発熱に対応するために、温度センサを内蔵し、コントロールしています。そのため、自身の熱的バランスが崩れるような運用は、避ける必要があります。避けるべき運用の中には、強制空冷も含まれます。Boson本体に、空気流が直接当たらない工夫が必要です。また、Boson・Boson+は、ラジオメトリ機か否かを問わず、出荷時のレンズとセットでキャリブレーションが行われています。スレッド・径が同じ他のレンズをマウントするなど、組み合わせが変わった場合は、その熱的バランスが変わってしまうだけではなく、レンズキャリブレーションが必要となります(同じFOVのレンズでも同様です)し、特にラジオメトリ機では、レンズキャリブレーションを行っても温度測定精度を取り戻すことができません。レンズ交換を前提としたカメラモジュールではないことに注意してください。

Boson・Boson+の温度変化の様子は、内部動作状況にも依存しますが、通常、安定に至るまで、一時間弱程度、必要になります。その間は、特にラジオメトリ機の場合、測定温度誤差が大きくなる結果につながりますので、ラジオメトリを使用する場合は特に注意が必要です。

 

次の2つのイメージは、温度が均一と考えられる黒体を撮影したものですが、Boson自身に熱的不均衡が生じている例です。

  1. ① 左:高温部分の存在 – この場合は、視野下側に取り除く必要がある熱源があると考えられます。
  2. ② 右:鏡筒の影響 – この例は、レンズ鏡筒温度が高い場合(熱を鏡筒に受けている場合、あるいはBoson・Boson+本体の熱が鏡筒に回っている場合)に見られる状況になります。

Boson・Boson+を筐体に収めて使用する場合、鏡筒のレンズ面近傍に、筐体からの熱伝導をなるべく避けてOリングを設け固定するなど、レンズ面をむき出しにして実装する方法と、レンズ面前に窓を設けて実装する方法の、大きく分けて2通りがあり得るかと思います。レンズ面をむき出しにする場合は、外気影響を受けることになりますが、筐体形状によっては、極力その影響を抑えることも可能かもしれません(HadronといったFLIR社のUAS製品には、サーマルカメラ前面に窓はありません)。特に窓を設ける場合(FLIR社のADKは窓が設けられています)は、それにより透過してくる遠赤外線量が減衰します。また、筐体設計に注意を払っても、筐体内に、画像処理プロセッサあるいはシングルボードコンピュータなどの発熱体を設置する必要がある場合は、それが外乱としてレンズ鏡筒を通し、上に掲載した円環が発生しやすくなるため注意が必要です。

屋外で使用する監視カメラのようなケースで、窓を設けている場合、気候によって、窓に防曇対策を必要とするかもしれません。その場合、防曇対策ヒーターによる熱を直接Boson・Boson+が受けないよう、窓とレンズ面との距離は、十分に確保されている必要があります。

 

十分に、Boson・Boson+温度が安定している状況で、Boson Applicationに内蔵されている、supplemental FFC設定を行うことで、筐体環境を反映し、窓による減衰や、円環の発生を抑制することができます。Supplemental FFCを実施するためには、Boson・Boson+の視野全体をカバーする黒体(炉) – 室温で可 が必要になります。

黒体は、本格的な黒体炉、ではなくとも、温度が急変しづらい、5mmほどの厚さのアルミ材を使用し、黒体スプレーなどを使用して均一に塗装し製作することも可能です。レンズと接触しない距離から、Boson視野全体を覆えるサイズ(Boson640 FOV=95°のsFFCを実行するには、おおむね150×150mm)が必要です。

 

実際の手順は次の通りです。

  1. ① 実際に運用する筐体に納められている状態で、一時間程度通電しておきます。運用する筐体に収められていることが重要です。
  2. ② Boson Applicationを起動し、黒体が、Boson・Boson+視野全面を覆うように設置します。
  3. ③ Boson ApplicationのLens Clibrationメニューから、SFFC CALIBRTIONを選択(右図)
  4. ④ 上部Current Lens(右図では空白)、1を選択します。
    デフォルトとして、0に出荷時設定があります。したがって、1を選択して実施することで、0 ⇔ 1を切り替えることで、効果を確認することができます。
  5. ⑤ CALIBRATE SFFCボタンクリック、キャリブレーションが始まります。
  6. ⑥ Boson Applicationの指示に従い、CAPTUREが表示されたらクリックします。

 

結果がBosonに書き込まれたら、supplemental FFCは終了です。数分程度で実施できます。

 

Supplemental FFCの実施効果が納得できるものであれば、Current Lens = 1のまま、System – CONFIGURATION CONTROLSから、SAVE POWER-ON DEFAULTSをクリックすることで、以後、Boson・Boson+起動時に、デフォルトとして選択されるようになります。なお、supplemental FFCの効果は、Image Appearance – ADVANCED – Supplemental FFCスライドボタンのon/offでも確認できます。

 

Supplemental FFCを実施したにもかかわらず、時間経過後や、運用環境に設置した結果、NUC(シャッター動作)によって均一性を得られない場合は、何等か、熱的設計について、対策が必要な状況と考えられます。