2023.05.10

Teledyne LeCroy社製X240
Bluetooth Dual-Modeライセンス登場!

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コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
コーンズテクノロジーでは先進的な製品・技術を日本産業界へ紹介する技術専門商社として、通信計測・自動車・防衛セキュリティ・電子機器装置・航空宇宙・産業機械といった技術分野のお役立ち情報を紹介しています。

本コラムの構成

■そもそもBluetooth Dual-Modeって?
     -BR/EDRとLEについて
     -Bluetooth Dual-Modeニーズの増加

■Bluetooth Dual-Modeの確認ポイント
    ①Device Database/Security画面
    ②Summary/Decode画面
  ③Coexistence画面
  ④Timing Analysis画面
  ⑤Throughput画面

■まとめ

はじめに
2009年 Bluetooth技術に新たにLow Energyが追加されて以降、BR/EDRとLow Energyを同時に使用するユースケースが増えてきました。さらに昨今ではLE Audioが正式にリリースされたことによって、ますますそのニーズが高まると予想されております。そんな中で、コンパクトなBluetoothプロトコルアナライザ「X240」に新たにBluetooth BR/EDRとLEを同時に測定できるDual-Modeが新しいソフトウェアライセンスとして登場しました!

■そもそもBluetooth Dual-Modeって?

-BR/EDRとLEについて

Bluetoothは皆様ご存知の通り、Bluetooth BR/EDRとBluetooth Low Energyの2つの機能で構成されています。Bluetooth LEはBluetooth 4.0に追加されており、それまでの従来の通信方式であるBR/EDRをBluetooth Classicと呼びます。そんなBluetoothの2つの機能を同時解析できるのがBluetooth Dual-Mode (以下、Dual-Mode) になります。それではなぜこのDual-Modeの解析が重要となるのか見ていきましょう。

まずBluetooth BR/EDRとLEはそれぞれの規格には変調方式など様々な部分で異なりますが、大きな違いとしては伝送速度があります。2023年5月現在ではBluetooth LEの伝送速度は 最大2Mbps、BR/EDRの場合は3Mbpsまでのデータ転送が可能です。

※Bluetooth BR/EDR, LEの違いについて(2023年5月時点)

Bluetooth BR/EDRは常時データのやり取りを行っている状態での利用に適しているため、主な例としてはワイヤレススピーカーやヘッドセット、マイクなどのオーディオ分野でよく使用されています。
Bluetooth LEはBluetooth BR/EDRと異なり、敢えてデータのやり取りに間隔を持たせることによって低消費電力化を実現しています。そのため良く使用される例としては、電池消費量を削減したいウェアラブルデバイス用などのセンサー類やIoTデバイス、キーボードやマウスなどがあります。
こういったBR/EDRとLEの特性を活かした、両規格を扱えるチップ(Dualチップ)を搭載している製品も多く市場に出ています。

パソコンを例として見てみますと、Web会議をしている際にマウスを使用しながら、ワイヤレスヘッドセットを使用することがあるかと思います。その場合はマウスではBluetooth LEでパソコンとやり取りをし、ワイヤレスヘッドセットではBluetooth BR/EDRでやり取りを行っています。その他にはスマートフォンは最たる例のひとつになります。カーナビなどもDualチップを搭載しています。

そういったデバイスを使用する際、実はBR/EDRとLE同士で干渉などの同時使用ならではの問題が起こることがあります。そんなときに2種類のBluetooth規格を同時に測定できるのがDual-Modeになります。

 

   -Bluetooth Dual-Modeニーズの増加

昨今はBluetooth LEで多くの機能拡張が行われており、最近ではBluetooth LEでオーディオ伝送をするLE Audioが2022年7月に全ての仕様が完成しました。こちらは低遅延、低ビットレートでも高音質、複数デバイスへ同時に転送できる特長を持っています。

従来Bluetooth BR/EDRが担っていた部分であるオーディオ用途でもこのようなLEの特徴を活かしてAudioが伝送でき、かつ複数デバイスへの同時転送ができるようになります。それでは、LE Audioだけで良いのでは?と思えますが、完全に置き換わるのはまだ先だと考えられています。そのため、LE Audioが普及するにつれ、Bluetooth BR/EDRとLE両方でオーディオ伝送できるデバイスが市場に出回ると考えられています。

※今後のBluetooth Audioが送られるBluetooth規格の割合予測グラフ(Bluetooth SIG 市場調査 Bluetooth Audioの未来より抜粋)

また、オーディオ以外の分野でもBluetooth のBR/EDRと LEの両方を扱えるDual Chipを搭載したBluetooth製品は徐々に増加していくと予想されています。そのため、今後Dual-Modeライセンスの必要性は増加していくと考えられます。

※Bluetooth BR/EDR, LE, BR/EDR+LEデバイスの予測推移グラフ(Bluetooth SIG 2023市場動向より)

■Dual-Modeの確認ポイント

ここまではBluetooth Dual-Modeの詳細と今後のニーズについて紹介してきましたが、ここでは実際にそんな2規格を同時解析するときにTeledyne LeCroy社のBluetoothプロトコルアナライザを用いてどのように解析できるのかオススメの確認ポイントについて紹介します。

 

Teledyne社製のプロトコルアナライザ用ソフトウェア Wireless Protocol Suite(WPS)は複数の測定画面を備えており、さまざま視点からDual-Modeの解析を行うことができます。。それぞれの測定項目内のオススメポイントを紹介します。今回の例はスマートフォンにイヤホン(BR/EDR)とマウス(BLE)を以下の通りに接続したものになります。

※測定セットアップと測定ソフトウェアWPSの画面

・確認ポイント① Device Database/Security画面

まず、WPS内のDevice Database画面では、周囲のアクティブなBluetooth機器を表示します。今回は BluetoothのBR/EDRとLEを両方測定しているため、両方の機器が表示されています。測定したい機器が表示されているか、その他にも周囲にどのような機器があるかを確認してみましょう。なお、機器に設定されている名前や搭載チップなども一覧から確認できます。

※周囲のアクティブなBluetooth機器が確認できるDevice Database画面

また、Security画面では各機器のペアリング情報をまとめており、どの機器がいつ接続/切断されたかを確認できます。また、こちらの画面でLink Key/LTK入力することによって暗号化されているお互いのやり取りを復号化することができ、より詳細に通信内容を確認できます。


※機器同士のペアリング情報を確認できるSecurity画面

ここでは接続したいデバイスとは別のデバイスに接続しに行く様子も確認することができます。そのため、妨害となりそうな周囲のデバイスにどのようなものがあるのかしっかり把握することは重要です。

 

・確認ポイント② Summary/Decode画面

Summary画面では、機器同士のパケットのやり取りをBR/EDRとLE両方の全てのやり取りの行われたパケットを時系列順に並べています。Summary画面内のAll Framesを選択しますと、測定している全ての規格を見ることができ、Technologyで「BR/EDR」「LE」を選択することによって各規格ごとに確認することもできます。こちらを見ることによって、どのタイミングで、機器がBR/EDRとLEのそれぞれでどのようにパケットのやり取りしていたかを追うことができます。また、階層ごとでフィルタリングもされているため、アプリケーション層では見えてこなかった問題もBaseband層やLMP層で確認することができます。

また、特定のパケットを選択しますと、その詳細はDecode表示で確認ができます。

BR/EDRとLEを同時に使用する際、一方の通信が上手くいかないという経験はないでしょうか?そのような場合、一方の通信に集中してしまいもう一方の通信が止まってしまうということがあります。そのような状態を把握するのにこの確認ポイントは重要です。

 

・確認ポイント③ Coexistence画面

Coexistence画面では周波数ホッピングの様子が見られます。パケットはそれぞれ色分けされており、紫はBR/EDRのパケット、緑はLEのパケット、それぞれを黄色で囲まれているパケットは再送パケット、赤で囲まれたものはエラーパケットになります。そのため、黄色や赤が多い箇所では再送とエラーが多く発生していることを意味し、通信品質が落ちてしまっている部分である可能性が高いため、それぞれのパケットを確認すると改善への糸口が見つかるかもしれません。例えばDual-Modeで通信を行っている場合、BR/EDRとLEのお互いのパケットの干渉が起こる場合があります。その際に同時に解析ができれば、どのタイミングでどういったパケットによって干渉が起きてしまったかが確認することができます。

※Coexistence画面

・確認ポイント④ Timing Analysis

Timing Analysisではどのタイミングで、どちらの機器から、どれくらいのデータ量でやり取りが行われたかが確認できます。こちらではBR/EDRとLEでのお互いの送信タイミングを細かくみることができます。そのため、例えばスマートフォンからBR/EDRパケット送信後にLE パケットが送信されるまでのタイミングを解析できます。下の例では、同じタイミングでBR/EDRとLEのパケットが送られておりますが、このような現象が起こると、正しくパケットが送れない/受け取れない、干渉が発生するなど非効率的な通信に繋がりますので、ぜひこちらをご確認いただくことをオススメいたします。

※Timing Analysis画面

・確認ポイント⑤ Throughput画面

Throughput画面では、文字通り機器のスループットをグラフで表しています。データ転送量を確認できるため、急激なグラフ変化よりデータ転送の変化が起きている様子を確認できます。

今回の例では、LEのスループットが大幅に上昇したタイミングで、BR/EDRのThroughputが大幅に減少しています。こういった変動付近のパケットを確認することによってお互いの通信がスループットに及ぼしている影響が確認できます。

※Throughput画面

 

それぞれの画面はお互いに連動しているため、上記で紹介したSummary画面とCoexistence、Timing Analysis、Decode等々の画面を同時間面で複数の観点から問題解析ができます。

 

■まとめ

今回はBluetooth BR/EDRとLEの同時解析についてご紹介しました。今後、ますますBR/EDRとLEの同時解析は重要となってきます。Dualチップを搭載している製品だけでなく、LEのみしか搭載されていないという方も、接続相手がDualチップ搭載製品ですとBR/EDRの影響を受けてしまうこともあります。そのようなときは、手軽にDual-Mode解析ができるX240をぜひご活用してみてください!

 

以下のリンクより Teledyne LeCroy Frontline社 Bluetoothプロトコルアナライザ製品一覧を紹介しております。

      Teledyne LeCroy Frontline社 Bluetoothプロトコルアナライザ製品一覧ページ

  https://www.cornestech.co.jp/tech/frontline/

 

また、弊社ではアナライザをお持ちでないお客様向けにBluetoothの測定・解析サービスをご用意しております。まずはこちらでDual-Mode解析をお試ししてみたい方は以下リンクより詳細をご参照の上、お問合せください。

Bluetooth 測定・解析サービスのご紹介

https://info.cornestech.co.jp/Teledyne_Bluetooth_Measurement_Service

 

その他Bluetoothプロトコルアナライザに関するご質問やご要望等ございましたら、お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。