2024.11.27
オーディオ・音響を支えるオーディオアナライザと
業界標準のAudio Precision製オーディオアナライザとは
AUDIOPRECISION
オーディオや音響の世界において非常に重要である音質の評価や機器の性能測定。その際に欠かせないツールがオーディオアナライザです。プロのエンジニアや音響機器メーカーが使用するこのツールは、音響信号の解析を通じて機器の音声品質や性能を評価します。なかでも、Audio Precision製のオーディオアナライザは、その精度と信頼性から業界のスタンダードとして広く利用されています。
この記事では、オーディオアナライザの基本的な役割や原理、そしてAudio Precision製品の特徴について詳しく解説します。
オーディオアナライザとは?
オーディオアナライザを一言でいうと、音響関連機器のアナログ音声やデジタル音声を測定・解析を行う機器です。オーディオアナライザを使用することで、オーディオ機器などのパフォーマンスを定量的に評価し、音質の改善や問題の特定ができます。
オーディオアナライザで測定できる内容には、「周波数特性」「歪み」「ノイズレベル」などがあります。「周波数特性(Frequency Response)」を測定することで、音声信号レベルが周波数に応じてどのように変化するか定量的に観測できます。また、「歪み(Total Hermonic Distortion)」を測定することによりオーディオ信号に含まれる不要な成分を特定できます。「ノイズレベル(Signal to Noise)」の測定では、信号に対するノイズの割合を測定し、S/N比(信号対ノイズ比)として表します。S/N比が高いほどクリアでノイズの少ない音であることを示しています。このように、オーディオアナライザを使い「周波数特性」「歪み」「ノイズレベル」などを測定することで機器のパフォーマンス・音質を評価できます。
音響機器の性能を評価する基本測定項目
前述の「周波数特性」「歪み」「ノイズレベル」に加えて、「レベル(Level)」「位相(Phase)」「クロストーク(Crosstalk)」という項目も、評価・測定の指標に使われます。
まず、「レベル」は最も基本的なオーディオ測定に使われる要素で、装置がどの程度のエネルギーを出力するのかを表します。電気音響の世界では音を電気信号に変換しますので、「レベル」は電圧の大きさで考えます。
続いて、時々刻々と変わる交流の瞬間のありさまを「位相」と言い、2つ以上の同じ周波数の交流が時間的に一致しているときは同相と言います。逆に両者の変化が時間的にずれている場合には位相がズレているとか、位相差があると言います。最後のクロストークは他のチャンネルからの信号漏れになります。信号漏れにより再生音の定位が悪くなります。
オーディオアナライザの今
前述のように基本的な測定項目は変わらない一方で、近年オーディオ機器は急速にデジタル化が進んでおり、HDMIやBluetooth機能が標準的に搭載されるようになりました。それに合わせて、オーディオアナライザも進化を続けています。例えば、Audio Precision現行のAPXシリーズアナライザは、HDMIやBluetoothの音声信号の測定評価が可能となっています。また、専用ソフトウェアにより操作されるAPXシリーズアナライザのソフトウェアは、毎年ソフトウェアがアップデートされ、そのたびに性能向上・機能追加が実施されています。
他にも、任意の測定項目を一括で測定でき効率化が図れるシーケンスモード、THD+Nの機能向上、イヤホンやヘッドホン・スピーカーのアコースティック測定、RUB&BUZZの測定、精度を保ちながらも高速スイープ測定を可能にしたFast Sweep機能などを持ち、設計開発から製造ラインまでさまざまな場所で使用されています。
オーディオアナライザの使用用途・事例
では、実際にどのようなシーンでオーディオアナライザが活用されているのか、紹介していきます。
オーディオ機器
オーディオアナライザは主に、オーディオ製品やイヤホン、ヘッドホン、テレビ、パソコン、ゲーム、電子楽器などの品質確認および品質向上、オーディオ用半導体のR&D、製造ラインでの合否判定テストに使用されています。
スタジオ・ホール・放送音響
室内で使用する際にはスタジオやホールのミキサーなどの音響機器の解析などにも使用されるほか、放送局やレコーディングスタジオでは放送や録音の音質の最適化に用いられます。スタジオ内の音響特性を測定し、ミキサーやマイクロフォンの配置を調整することで、放送や録音の音質を最高の状態に保つことができます。
オートモーティブ
他にも、オートモーティブ業界でも、オーディオアナライザは活用されています。近年では、車両の快適性を高めるために、騒音振動解析(NVH解析)や車内エンターテインメントの重要度が増しており、カーオーディオはもちろん、音声認識やアクティブノイズキャンセリングなど、多くのマイクやスピーカーが使用されています。それにともない、普及が進むA2B(オートモーティブ・オーディオ・バス)信号の測定の必要性が増しており、オーディオアナライザの存在は不可欠となっています。
以上のように、さまざまなシーンでオーディオアナライザは活用されており、白物家電などの音・音声を出す製品のテストにも使用されているなど、音が出る所には、その音の評価を行うために必ずオーディオアナライザが使われるといっても過言ではありません。
オーディオの計測器におけるAudio Precisionの立ち位置
それではオーディオアナライザのデファクトスタンダードであるAduio Precisionがどういうメーカーか解説します。Audio Precisionは1985年にアメリカで設立され、世界で初めてデジタルオーディオアナライザを開発しました。その後も多くの革新的な製品を市場に投入し続け、オーディオ機器の測定において最高の性能を提供しています。
アナログのオーディオアナライザは古くからありましたが、後発だったAudio Precisionが有名になった理由は、オーディオアナライザのデジタル化の優位性に気づき、音響信号のデジタル化を行ったことにあります。Audio Precisionは、音響信号のデジタル化で解析のしやすさ、パソコンを活用した演算で解析時間の短縮に貢献した結果、デジタルオーディオアナライザの市場投入以降、業界のトップを走り続けており、その製品はいまや音響解析のスタンダードとなっています。
おすすめのAudio Precision製オーディオアナライザ
つづいて、Audio Precisionの各モデルの中から、代表的なオーディオアナライザの特長とおすすめポイントを解説します。
オーディオアナライザの最高峰APx555B
オーディオアナライザの最高峰とされる機種がAPx555Bです。音響のプロ向けの機種で、残留THD+Nが-120 dB、最大1MHzの帯域幅のパフォーマンスという業界最高のパフォーマンスが得られています。ハイエンドオーディオ機器の評価や、極めて精密な音響測定が求められる場合に最適です。
品質とコストバランスに優れたAPx516B
フラッグシップモデルであるAPx555Bと比較して、品質とコストのバランスに最も優れたモデルがAPx516Bです。残留THD+Nが-100 dB、最大90kHzの帯域幅を持っており、一般的な使用においては出力性能も解析性能も十分です。
もちろん、学術的な研究用途ではハイエンドのAPx555Bを使用したほうが、より高度なデータ解析が行えますが、場合によってはオーバースペックとなります。そのため、オーディオアナライザの初心者や予算が限られている場合には、APx516Bをまずは検討いただくことをおすすめします。
アコースティック測定に最適なAPx517B
APx517Bはアコースティック測定に特化したモデルで、スピーカーやマイクロフォンなどのアコースティックデバイスの評価に最適です。広範な周波数帯域で高精度な測定を実現し、音響機器の開発において必要な測定が行えます。オプションとして、HDMI2+eARCやBluetooth Duoなど、さまざまなデジタルインターフェースの増設が可能です。
すべての測定を可能にするAPx500FLEX
オーディオアナライザによる解析はソフトウェアを通して行われます。このソフトウェアをUSBドングルキーを通して使用できるサービスが、APx500FLEXです。R&Dで必要な測定機能・精度は求めないが、簡易的に測りたいという場合には特におすすめです。
このアナライザはオーディオインターフェースやPCIカードを測定器として利用できます。マイクで収録した音声をオーディオインターフェースを通してパソコンへ送ると、パソコン内で音響解析が行われる仕組みです。従来のパフォーマンスを維持しつつオーディオアナライザ本体が必要ないため、フィールドテストをはじめ、製造ラインなどで、さまざまな音の解析、評価に対して費用対効果の高いテストが可能となります。
まとめ
オーディオアナライザは、オーディオ機器の性能評価をはじめ、音の解析に不可欠なツールです。なかでもAudio Precisionの製品は、その精度と信頼性から業界標準として広く認識されています。APxシリーズをはじめとするAudio Precisionのオーディオアナライザは音響のプロの測定ニーズに応えるために設計されており、その優れた性能は多くのエンジニアから高く評価されています。ぜひ導入をご検討ください。
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