2020.09.22
【Webマガジン Vol.39- Sep., 2020】Column: BluetoothプロトコルアナライザにおけるRSSIフィルターの重要性
WEBマガジン
初めに
Bluetoothプロトコルアナライザは、Bluetoothの無線データを取得してBluetooth通信の解析を行うためのツールです。
無線のデータ取得であるため、測定環境によっては、解析対象以外のBluetoothデバイスのデータを取得して余分なデータ量が増えることで、必要なデータを探す手間が増えてしまったり、長時間のデータ取得作業においてはストレージ容量を圧迫してしまうことがあります。
Teledyne LeCroy社のFrontline製品(以下、Frontline)のBluetoothプロトコルアナライザであるSoderaおよびX240では、ソフトウェアによるRSSIフィルター機能があり、この機能を活用することで、余分なデータを減らして必要なデータを取得することが可能になります。
本記事では、その手法についてご説明します。
RSSIとは
RSSIは”Received Signal Strength Indicator”の略で、受信信号の強度を表します。一般的に単位はdBmで表されることが多く、FrontlineのBluetoothプロトコルアナライザ SoderaおよびX240でもdBmで表示されます。
画像1:Bluetoothアナライザ「Sodera」での受信信号強度表示例
BluetoothプロトコルアナライザではBluetoothデバイス同士がやりとりしている無線データを記録します。2.4GHz帯全域のデータを取得可能なアナライザの場合、2.4GHz帯の信号をすべて受信するため、解析対象の機器以外の情報も取得してしまう可能性があります。
画像2:解析対象外の機器のデータも受信してしまう(イメージ)
フィルターとは
通信における「フィルター」という言葉の意味ですが、指定した条件(フィルターする条件)に応じて、ある条件では通信を許可したり、ある条件では通信を拒否したりといったことをする機能を指します。
Frontline社の RSSIフィルターでは、Bluetoothプロトコルアナライザが受信するデータの信号強度で閾値を設定し、任意の閾値以下の受信強度のデータをカットする機能になります。
画像3:RSSIフィルター – 解析対象外のデータをカットしている(イメージ)
Wi-Fiにおいてフィルターというと、デバイスのアドレスを使ったフィルター(特定デバイスだけの通信を許可する)があり、Bluetoothアナライザでもこのような機能をサポートしております(※1)。しかし、Bluetoothデバイスの通信の検証において解析対象のBluetoothアドレスがはじめからわからないケースがあることや、Bluetooth Low Energyにおいてはセキュリティの観点でランダムなアドレスが使われることもあり、Bluetooth解析においてはデバイスのアドレスを使ったフィルターでは対応しきれない場合があります。
その点、RSSIフィルターでは純粋にBluetoothパケットの信号強度でフィルターしますので、アドレスがわからない場合やアドレスがランダムに変わってしまう場合でも解析対象のデバイスのデータを取得することが可能です。
※1: FrontlineではBluetooth Low Energyでのアドレスフィルターをサポート
RSSIフィルターの実際
前述の通り、RSSIフィルターでは受信信号の強度に閾値を設定し、任意の閾値以下の受信強度のデータをカットします。
以下がRSSIフィルター実行前に室内でデータ取得した際の画面例です。アナライザで認識したBluetoothデバイスの数は22台、受信信号強度は弱いものだと-88dBm、強いものだと-23dBmとなっています。
画像4:アナライザで認識したBluetoothデバイスの数(RSSIフィルター前)
画像5:RSSIが弱い場合
画像6:RSSIが強い場合
そして、解析対象のデバイスはおよそ55dBm以上の受信信号強度でデータ取得できていることがわかります。
画像7:コネクション確立時での解析対象デバイスのRSSIを確認
そこでRSSIフィルターの設定で、-55dBmより弱い受信信号強度はカットするように設定します。
画像8:RSSIフィルター設定(-55dBm以下の受信信号強度はカット)
RSSIフィルター設定後は、アナライザで認識したBluetoothデバイスの数は5台となっており、受信信号が-55dBm以下のデバイスは表示されていない(データ取得していない)事が分かります。
画像9:アナライザで認識したBluetoothデバイスの数(RSSIフィルター後)
このようなRSSIフィルター機能を使うことで、効率的なデータ取得を行うことができるようになります。
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