2013.07.22

【Webマガジン Vol.5 – July, 2013】業界標準のオーディオアナライザ 最新の音声品質試験標準POLQAに対応

WEBマガジン

  • TOP>
  • 特集>
  • 【Webマガジン Vol.5 – July, 2013】業界標準のオーディオアナライザ 最新の音声品質試験標準POLQAに対応
コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
コーンズテクノロジーでは先進的な製品・技術を日本産業界へ紹介する技術専門商社として、通信計測・自動車・防衛セキュリティ・電子機器装置・航空宇宙・産業機械といった技術分野のお役立ち情報を紹介しています。

今日のスマートフォン市場では既にLTE対応が当たり前となっていますが、音声通信については現状のCSFB(Circuit Switched FallBack:回線交換フォールバック)を利用したものからIP通信を利用するVoLTE(Voice over LTE)への対応が予定されており、近年はこのVoLTEが採用するワイドバンドコーデックに対応した音声品質の客観評価手法について議論される機会が増えてきました。また、デジタル化の進む防災無線等の無線通信分野においては、従来の音質評価方法を見直す必要性もあるでしょう。

周波数応答特性やTHD+N特性(Total Harmonic Distortion Plus Noise:全高調波歪+ノイズ)のような従来のオーディオ評価項目では実際の知覚による音声評価が反映されていないことがあり、音声評価としては十分とは言えません。知覚による音質評価主法は評価者による主観評価に基づいており、繰り返し波形やスイープを用いて評価しないためにVolts、Hzのような定量的な単位で表すことができません。その代わりに評価者による品質の評価が平均化され評点で表されます。

現在まで最も広く用いられてきた知覚による音質評価の主観品質手法であるMOS(Mean Opinion Score)評価では、測定対象系の品質評価をITU-T勧告P.800で規定された『オピニオン評価』により測定します。MOS評価では次のイメージのように実際に評価者が音声サンプルを聴いて判定することになります。

 

 

   判定には多くの音声サンプル、多数の評価者、何回もの反復作業が必要となり、その結果得られた評点の平均値がMOS値となります。評点は右表の1から5の数値で表されます。

MOS評価は音声評価のキーベンチマークと言えますが、評点を得る作業には多大なコストと時間が必要となってしまうため客観評価手法の検討も必要となります。ここではITU-T勧告に基づいた客観評価手法について説明します。

 

 

   PESQ(Perceptual Evaluation of Speech Quality)はITU-T勧告 P.862で規定されたアルゴリズム用いた手法で、音声通信チャネル品質の格付け方法と言えます。PESQではあらかじめ録音されたスピーチサンプルを用意し、これが被測定デバイスやネットワークを通過した後の状態をオリジナルのスピーチサンプルと比較することで音声品質を評価します(下図参照)。PESQを用いればMOS評価のように部屋を評価者で満たす必要はなく、これはすなわちコストおよび時間の低減につながることを意味します。

 

 

   PESQでは、前述のとおりスピーチサンプルを評価することになりますが、スピーチサンプルは自ら録音して作成することもできますし、既存のソースを利用することもできます。ITUでも言語別に男性、女性をカバーするいくつかのサンプルを用意しており、ITUのホームページからダウンロードすることができます。PESQアルゴリズムはヨーロッパ、アジアの言語について広範囲で検証されており、問題ないことが確認されています。また、主観評価との比較でもほとんど差が無いことが確認されています。

POLQA(Perceptual Objective Listening Quality Assessment)はITU-T勧告P.863で規定された次世代のモバイル音声品質試験標準です。HDボイス、3G、4G/LTE、VoIPに特化しており、バックグラウンドノイズが高い状況下での正確な評価、AMRとEVRCコーデックの送信結果比較などもサポートし、次世代のモバイル通信の音質評価においては多くの面でPESQを凌駕します。また、PESQが対応する帯域幅300~3400 HzのNarrowband、100~7000 HzのWidebandに対応し、さらに帯域幅50~14000 HzのSupperwidebandに対応します。

 

弊社が取り扱いを開始した米国オーディオプレシジョン社は、業界標準となっているオーディオアナライザを長年にわたりご提供し続けています。HDMI、DSIO、PDM等の各種インターフェースに対応したAPx500シリーズではBluetoothによる無線インターフェースへも対応、ソフトウェアオプションにてPESQ/POLQAに対応しています。MOS値だけでなく、MOS値の時間変化、リファレンス音声波形および評価対象音声波形表示も可能です。また、最大で64のスピーチファイルを連続再生した場合のMOS値の変化を評価することが可能なAverageモードも搭載しています。もちろん、スピーチファイルのサンプルも同時にご提供します。

米国オーディオプレシジョン社の提案するPESQ/POLQA評価では、ITU-T勧告P.800による評価に比べて、場所の制限を受けず時間とコストの節約に大きく貢献することができ、VoLTE対応の進む携帯電話分野だけでなく、Bluetooth機器と連携するオートモーティブ分野、さらにはデジタル化の進む無線通信分野での音声品質評価に最適です。 コーンズテクノロジー社ではデモ機を用意しておりますので、ご評価のご要望は、
通信計測営業部 までご連絡をお待ちしております。