2020.08.22
【Webマガジン Vol.38- Aug., 2020】Column: イメージセンサーのカメラモジュール化
WEBマガジン
センサー出力のプロセッシング
イメージセンサーの出力は、画像処理プロセッシングにより、JPG(静止画)やMP4(動画)などのデータ形式に変換されます。
イメージセンサーの出力は、RGB輝度データの羅列(RAWデータ)です。これを画像データに変換するには、数値処理(RAW現像)を行います。同時に、以下のような様々な処理を行うことで、画質の向上や、各種の情報の抽出を行います。
- 露光量、色彩、明るさなどの補整
- 画素情報の欠落やエラー、ノイズキャンセルなどの補正
- HDR合成や、輪郭抽出、AI分析などの画像/数値処理
最後に、出力データを、所望のインターフェース規格に従って出力します。
これら一連の処理を行うLSIとして、ISP(Image Signal Processor)があります。各種のISPが市販されており、目的に応じて選択できます。多くは、センサーへの設定信号を出力する機能を持ち、センサーとのコミュニケーションを行いながら、ファームウエアによる設定/制御に従って、所望の動作を行います。
ISPは、特定の目的に特化/最適化したものが多く、用途が合えば高性能が期待できますが、コストパフォーマンスや、後々の仕様変更の際の機能拡張性に、考慮を要する場合があります。
また、OpenCVなどの各種のフリーライブラリや、AIを始めとした高次元の処理スキームも流通しており、FPGAやマイコン上に、自力で構成することも可能です。こちらは、拡張性を含めた高次元の設計自由度を確保できる一方、開発や検証にさらに工数が必要になります。
ISPメーカーの多くが、実装のリファレンスデザインを公開しています。パスコンや、不揮発メモリ、フレームメモリなどの周辺素子を、リファレンスデザインに準じて基板に配置することで、安定した動作が期待できます。
また、小型のISPであれば、両面実装などでセンサー基板と同一化することで、カメラモジュール全体の小型化や、コストダウンを行うことができます。
図6 システム構成の概要
今回、当社で作成したカメラモジュールは、小型のセンサーサイズに最適で使い勝手が良好なR5U8710(リコー電子デバイス)を採用しました。
- UVC出力に特化しており用途に適合
- AE、AWBなど機能が充実
- 低照度撮影、高速fps出力などファームウエアで対応可能
- 小型でシステムサイズを圧迫しない
- 色味調整ツールなどのサポートがある
Sapphire WVGAカメラモジュールの特徴
小型センサーの機動性を生かした、あらゆる場面に使い勝手の良い、小型カメラモジュールを実現しました。
図7 カメラモジュール外観
表:カメラモジュール仕様一覧
イメージセンサー | TELEDYNE e2v SAPPHIRE WVGA 1/4″サイズ 4.5umピッチ36万画素 |
---|---|
シャッター形式 | グローバル/ローリングシャッター選択可能 |
ダイナミックレンジ | > 52dB |
SNR | ≦ 39dB |
画像処理チップ | リコー電子デバイス(株) R5U8710 |
動作温度 | ー40~85℃(0~65℃推奨) |
保存温度 | ー40~85℃ |
動作電圧 | 3.3V±5% |
コネクタ | FFC 0.5mmピッチ 10ピン(USBコネクタへ変更可能) |
インターフェース | USB2.0 |
出力形式 | UVC |
出力画像サイズ | WVGA、VGA、QVGAなど選択可能 |
圧縮形式 | YUY2、MJPEG |
フレームレート | ・標準30fps ・MJPEGの場合、最大120fpsが可能 ・27.5fps、55fpsへの設定も可能 |
レンズ | 固定焦点 F=2.68mm f=2.8 Distortion~-4.0% (レンズ変更可能:ホルダーや基板の設計変更を要する場合があります。) |
レンズマウント | M12 x p0.5 |
画角 | VFOV=44° HFOV=64° DFOV=73° |
モジュールサイズ | 31(W)x28(D)x19(H) mm |
固定穴 | センター位置26×23 Φ2.1 mm |
ファームウエア設定 | AE、AWBなど。 |
- IFはUVC規格なので、USB端子に接続することで自動的にUSBカメラとして認識されます。
- 暗い環境に特化したAE機能のオプションを選択可能です。(照度に応じてAEを広範囲に自動制御します。)
- linux環境からV4L2コマンドによる制御が可能です。
- インターフェースはFFC 10ピンです。
- 電源は3.3V単一です。
- PCなどのUSB端子に直接接続するには、5V→3.3VのDC-DC回路と変換コネクタが必要です。
図8 機器への接続図
※ FFC→USBコネクタへの変更など、各種のカスタマイゼーションも賜ります。ページ下部のお問い合わせフォームより、お問い合わせください。
※本カメラモジュールの作製は、テラテクノス株式会社に依頼し、開発上のご協力を頂きました。
テラテクノス株式会社: https://www.terratechnos.com/
カメラモジュール応用例:手の平ネットワークカメラ
今回、本カメラモジュールと、小型のシングルボードコンピューター(SBC)を使って、画像のネットワーク配信環境を作製したので、応用事例として紹介します。
使用したSBCはNanoPi Neo2。手のひらサイズの小型サイズに、高速のLANポートと、複数のUSBポートを備えています。USBポートは、通常のコネクタだけでなく、ボードピン上にも出ており、3.3V電源も供給されているので、本カメラモジュールをそのまま接続できます。
図9 NanoPi Neo2のピン構成と接続ポート例(ピンクの追記部)
※ 図はhttp://wiki.friendlyarm.com/wiki/index.php/NanoPi_NEO2より引用
接続に関する設定は不要で、本カメラモジュールを有線接続するだけで、Video deviceとして認識されます。