2022.02.10

Column: イメージセンサをカメラ化するプロセスについて

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コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
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はじめに


昨今では、様々な特徴を持つイメージセンサが入手可能になっており、その特性を生かした、独自のデジカメの作成も可能になってきています。しかし、実際にデジカメの設計、つまり「イメージセンサをカメラとしてアセンブリする工程」を考えますと、電子回路と光学系の設計要素が共存すること、サイズの大きい画像データを同時処理するため信号処理量が多いことなど、一般的な電子基板の設計工程にはない要素が含まれてきます。
本稿では、主に「産業向けデジカメ」の設計工程を概観し、その特徴をピックアップしてご紹介します。

デジカメの構成


デジカメには、「センサー基板」と「光学系」の2つが基本要素として必ず入ります。その各々が、設計資産として、蓄積・流用が可能です。(例えば、次のモデルにチョイ変で使うことが可能です。)
その組合せ方には、いくつかの方式がありますが、大まかには次の2つに分類できます。・ フレーム構造体に基板と光学系をマウントする場合
・ 基板に光学系を直接マウントする場合(いわゆるボードカメラ)

特に、後者のボードカメラは、電子/光学/機械の設計要素を一つの基板に集約することによる特殊事情が発生します。

 

イメージセンサの外観


イメージセンサは、外観からして、普通のICとは異なります。
まず、表面が受光面として開口しておりますので、直接触れることができません。例えば、真空ピンセットなどでIC表面を直接ピックすることはできません。基板のアセンブル時も、マウンターやピックアップツールに、同様の配慮が必要です。また、通常のICであれば、マーキングが表面に施されており、実装後も直接目視ができますが、イメージセンサは表面が開口している都合上、マーキングが裏面になされるため、実装後は確認ができません。例えば、イメージセンサに不良が発生して解析を行う際に、マーキングからウイークリーコードを確認する作業がまず初めに発生しますが、そのような情報をトレースできるようロット管理をしておかないと、センサーを基板からディスマウントしなければなりません。イザと言う時(大概は「急ぎ」)に、余計な工数とコストが発生することになりますので、あらかじめトレーサビリティに備えておくことが肝要です。


 

イメージセンサのピン構成


基本構成は、以下のように分類できます。
・ 電源:2~3電圧、かつデジ/アナ分離など複数系統
・ 設定信号:I2CやSPIなどの規格に準拠
・ 制御信号:クロック、リセット、ストロボ同期など
・ データ:パラレル、LVDS、MIPIなど、レーン数設定可能イメージセンサに、別種の機能(例えばAEや物体検出など)が備わっている場合などは、それに準じた増減があります。

 

イメージセンサ基板


通常、リファレンスデザインがメーカーからリリースされていますので、それを踏襲します。
リファレンスデザインは、アートワークまで含むことはまれで、パスコンなど周辺回路の簡単な記述であることが大半です。しかし、一般にイメージセンサの消費電力は小さくないので、電源周りの設計は重要です。電源の相互接続なども含め、まずは踏襲し、その上で、一般的な電源設計セオリーや、社内ノウハウなどを加味する方向で設計を進めます。

 

イメージプロセッサー


イメージセンサの出力は、pixelが検出した光の強度です。これを、JPEGやTIFFなどの画像やMP4などの動画、GigEなど各種カメラI/Fといった、一般に「画像」として認識されるフォーマットに変換する作業が必要になります。これを担うICを、本稿ではISP(Image Signal Processor)と呼びます。
ISPは、シンプルな単体のICから、複雑な機能を併せ持ったFPGAボードに至るまで、様々な構成があります。ISPは、センサー出力を画像フォーマットに変換する機能の他に、例えば、AE(自動露光調整)や、AF(自動ピント調整)などの機能を通して、イメージセンサや光学系の制御を行います。また、出力画像に各種の補正を施す機能(輝度や色味調整など)を備えることも多く、さらに、AIによる認識などの高次元の機能を備える場合もあります。設計者は、ファームウエアを通して、これらをソフト的に設計・設定します。

ISPの制御I/Fが、イメージセンサの制御系(通常はI2CやSPIなどが多い)と異なる場合は、これらの間を取り持つ変換ICを追加します。

同様に、ISPの選択は、イメージセンサの画像データ出力方式(CMOSやLVDS、MIPIなど)に対応しているかで、端的に決まってしまうケースも少なくありません。

 

ボードカメラ


ボードカメラは、センサーボードに小型のレンズを直接マウントして、基盤単体でカメラ機能を備えたもので、例えば、ラズパイカメラなどが知られています。M12といった小径レンズを、小型のイメージセンサと組み合わせて用いる場合が多く見られます。
一般に、M12以下の小型のレンズは、高さなどの機械的な寸法や、バックフォーカスやイメージサークル径などの光学寸法も様々で、ホルダーは専用品となる場合がほとんどです。部材の精度も製品によって異なっており、焦点距離やf値などの通常の光学設計値の他に、ピントの出具合や、実装の要求精度なども違ってきます。例えば、レンズホルダーは通常はネジ止めになりますが、基板のネジ穴の機械的な精度が、ホルダーのマウントに必要な精度に満たないケースがあるなど、通常の基板設計にはないチェック項目がありますので、注意を要します。また、レンズの取り付け位置や、フォーカス調整をどの工程で行うか(実装時か、出荷テスト時か)など、全体の工程の構築や、見直しが必要になるケースがあります。

基板の回路設計は、レンズホルダーがマウントできるよう、その位置関係に配慮してアートワークを行います。

その際、広角と望遠で同じ基板を使用したいといった後々のニーズにも配慮して、複数のレンズを使い分ける場合や、将来的にレンズ変更が予想されている場合などは、それらの影響をあらかじめ想定しておき、基板設計に手戻りが発生しないよう、配慮が必要になります。

 

光学系の設計


小型デジカメの光学設計に関しては、小型であること以外、特異な点はありません。
通常通り、以下のような要件に即した設計や部材の選択を行います。※ 光学設計の詳細については、本稿では割愛します。

・ 焦点距離(画角)
・ 明るさ(シャッタースピードとレンズのf値)
・ イメージサークル系
・ レンズマウント規格(産業マウント各種)

 

出来上がり

 

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