2020.07.22

【Webマガジン Vol.34- Jul., 2020】Column:成長市場向けの高付加価値プラスチック

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コーンズテクノロジー編集部
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成長市場向けの高付加価値プラスチック

射出成形構造エレクトロニクス(IMSE™:Injection Molded Structural Electronics)テクノロジーを駆使して製造される「スマートサーフェス」は「現代的なタッチ・照明・接続性を持つ電子機能 – 求められた相互作用を自然に導き、かつ不使用時は目立たない、デザインに溶け込む直感的なコントロール」、「洗練された自然な木材仕上げ – シームレスなデザイン統合、高精度のタッチコントロールとインジケータでユーザ入力を実現」という2つの設計ビジョンを実現します。

多くのデザイナーとOEMがIMSE™テクノロジーを使用して設計ビジョンを実現、製品を差別化し、顧客満足を得ています。 IMSE™パーツは、軽量で薄く耐久性に優れており、簡単に統合可能です。さらに、多くの場合単一のシームレスなIMSE™パーツは、従来の多層電気機械アセンブリの多くのパーツを置き換える事が可能です。これらの理由と全体的なコスト効率のために、IMSE™ソリューションは自動車産業から各種産業、IoTからスマートホーム、家電に至るまでの幅広い市場で急速に人気を集めています。

IMSE™はプラスチックメーカに対し、コアプラスチック製造とフィルムインサート成形(FIM)の能力を資産として活用し、成長市場で高付加価値の電子部品を作成する機会を提供します。

 

 

IMSE™とは何か?

射出成形構造エレクトロニクス(IMSE™)は、回路印刷と3次元成形プラスチックに内蔵可能なLEDなどのディスクリート電子部品を組み合わせた技術です。 その結果、電子部品は射出成形プラスチック内でカプセル化され、最終部品は耐久性の高い軽量な3次元単一部品となります。

 

「私たちは、100年前のボックス内コンポーネントアプローチに取って代わる、TactoTek社の軽量・形状に優れ、堅牢な、卓越した電子機器構造技術から、電子機器設計のグローバルな変化を目の当たりにしています。」 IDTechEx会長、ピーターハロップ博士

 

IMSE™は電子機能を3次元シェープで実現する薄くて軽量な構造により、デザイナーパレットを拡張する新しい可能性を提供します。 これらのスマートサーフェスを製造できるようになったことで、デザイナーは、消費者が望む高いデザイン性と直感的な相互作用サポートの調和を可能とした電子機能とスタイリングを提供する、新しい方法を手に入れることが出来るようになりました。

IMSE™の設計は従来の電子機器とは大きく異なります。 フルサイズのプリント回路基板を備えた多層物理構造の代わりに、IMSE™パーツは主要な電子部品を表面構造の内部に統合するためです。

代表的なIMSE™部品構造を図1に示します。この部品では、部品のA(上部)表面とB(下部)表面にIMLフィルムがあります。
この例では、A表面は装飾です。 Bフィルムは、この部品の電子キャリアとして機能し、効率の良い低密度のプリント回路基板です。 回路、アンテナ、センサなどの電子機能は、銀(Ag)ペーストを使用して上面/内面に印刷されます。

複数の回路層は、回路が互いに交差する誘電絶縁体を印刷することにより製造されます。 LEDなど標準的な電子部品が、照明などの機能を追加するために表面実装されます。これら、「表面フィルム」、「印刷および表面実装電子部品」、および「射出成形樹脂」は、製造プロセスを経て、電子部品を内蔵した、射出成形プラスチックで保護される軽量で、丈夫な、滑らかな部品となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

設計の自由度が上がることに、IMSE™は次のような追加の利点を提供します。

  1. IMSE™を従来の電子アセンブリと比較すると、通常、厚さが最大90%、重量が最大80%減少します。
  2. 電子機器は密閉構造の内部にあり、異物、湿気、振動から保護します。
  3. プリントタッチセンサとアンテナが部品の表面に非常に近いため可能となる、優れた静電容量式タッチとアンテナ性能です。
  4. 各工程を経て、IMSE™パーツは、複数のサブアセンブリ構成ではなくなり、単一のシームレスなパーツになり、金型、サプライヤチェーンの管理、およびアセンブリのコストを最小限に抑えます。
  5. 加飾と機能のバリエーションは、印刷プロセスと同じツールを再利用して実装できるため、高速で安価となります。

 

IMSE™部品の製造

IMSE™製造は、フィルムインサート成形(FIM:Film Insert Molding)の最新の方法です。 IMSE™部品は、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)や熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)などの標準的な高圧高温プラスチック、装飾インクや機能インク、はグローバルサプライヤのものを使用し、標準的な製造装置を使用して製造することが可能です。 図2に示すように、4つの主要なIMSE™製造工程があります。印刷は最初のIMSE™製造プロセスです。必要に応じて装飾が印刷され、電子回路が印刷されます。現在、銀(Ag)ペーストのスクリーン印刷が本技術に適しています。

電子部品は、2番目のIMSE™製造ステップで表面実装技術(SMT:Surface Mounting Technology)を使用して実装されます。このプロセスでは、コンポーネントが自動的に選択され、電気的および機械的に接着された2次元IMSE™フィルムに実装されます。平面状態で部品を実装することは、IMSE™が経済的でスケーラブルであることの1つの鍵です。 3D表面実装ソリューションとは異なり、2D SMTは非常に高速で、世界中に機器が普及しています。電子部品実装後、部品は3次元(3D)形状に熱成形されます。以下の部分では、機能性Bフィルムと装飾用Aフィルムの両方が熱成形されます。 IMSE™の技術とは、さまざまな材料が熱成形およびその後の処理のストレスにさらされるときに、構造的および電気的にどのように機能するかを理解することです。最後のステップでは、AフィルムとBフィルムを射出成形金型へのインサート材として使用し、プラスチック樹脂をフィルム間に射出、電子部品をカプセル化して、保護する一体のシームレスな部品を製造します。

 

 

 

 

 

 

 

各IMSE™製造プロセスは、広く知られ、普及しており、世界中で利用可能です。さらに、材料は市販されています。ただし、これらのすべての手順を組み合わせて高い歩留まりで信頼性の高いIMSE™部品を製造するには、高度のノウハウが必要です。 TactoTek社、フィンランドのオウル工場でこの処理を毎日検証作業しており、同社はライセンシが使用するためのIMSE™テクノロジーを開発および工業化しています。最近、ドイツで開催されたK2019プラスチックショーで、同社とArburg率いるパートナーグループは、イベント期間中にライブの自動化されたIMSE™製造デモを実施し、IMSE™が実際に大量生産の準備ができていることを実証しました。

 

IMSE™製造デモ動画

 

IMSE™電子機能パレット

TactoTek社の顧客IMSE™設計の大部分は、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)ソリューションです。主な機能は、タッチコントロール、センサ、照明、接続性、表面処理です。これらの基本的なヒューマンマシンインターフェイスHMIビルディングブロックを組み合わせて、製品を差別化し、価値を定義し、ユーザエクスペリエンスを形成する設計を作成します。

 

 

業界全体でのIMSE™の価値

他のテクノロジーと同様に、特定のメリットの価値は、市場や使用例によって異なる場合があります。自動車では、部品の重量を最大80%、部品の厚さを最大90%削減することで、自動車メーカーは、主な技術目標と統合、設計要件を満たしながら、電子機能に対する消費者の需要に応える絶好の機会を生み出しています。従来の電子構造には薄すぎる場所の車両ドアトリムカバーパネルなどの装飾部品は、タッチコントロール、照明、その他の電子機能を備えた美しく完全に機能するスマートな表面に変換可能です。一方、オーバーヘッドコントロールパネルなどの他のコンポーネントは、周囲の表面にシームレスに溶け込む薄型の軽量構造に変換可能です。
家電製品では、消費者は毎日操作する個々のユーザーインターフェースの不一致に困惑しています。車、自宅、オフィスなど、すべてにおいて相乗効果をもたらす一貫した生活環境が求められています。IMSE™は、見た目が美しいだけでなく、最大限の使いやすさを提供する美しいヒューマンマシンインターフェイスを作成するための理想的なソリューションです。また、IMSE™は従来の電子構造では非実用的または不可能な形状設計をサポートします。 IMSE™のエレクトロニクスは射出成形プラスチック内にカプセル化されているため、振動、破片、湿気から本質的に保護されています。これは、アプライアンスの使用例で特に重要です。

 

IMSE™の使用例-オーバーヘッドコントロールパネル

最もエキサイティングなIMSE™デザインは、市場を熟知したTactoTek社の顧客により、独自に開発された設計言語を使用して作成されたものであり、顧客の要件と要望に精通しています。これらのデザインのほとんどはTactoTek社のホームページにていずれ公式発表されます。上記顧客の1つであるPassiveBoltは、シェパードスマートロック(IMSE™テクノロジーを使用して設計されたスマートホームデバイス)によってCES 2020イノベーションアワードを受賞しました。
より完全な設計コンセプトを示し、IMSE™の機能を具体的な形式で表すために、TactoTek社はIMSE™テクノロジーデモンストレータを作成する。このデモンストレーターの1つで、自動車向けのオーバーヘッドコントロールパネルの機能を備えた形式であるパーツをTactoTek社ではBat Rayと呼んでいます。
Bat Rayは、中でも人気のあるIMSE™の機能をフォームファクターで表示するために作成されたIMSE™テクノロジーデモンストレータであり、OEMとそのデザイナーは、独自のユースケースと製品設計の新しい可能性を自由に思い描くことができます。また、Bat Rayはオーバーヘッドマウント用に設計されていて、使用されているIMSE™機能により、様々な形状とスタイルを組み合わせて独自の製品を作成できます。

BatRayは、多くの市場に対するIMSE™技術の汎用性を示すために、一般的な自動車内装部品用の標準評価テストをクリアしています。
なめらかで、その名前の通りに理想的な環境に適したBat Rayは、車両用のオーバーヘッドコントロールパネル(OHCP)のコンセプトです。射出成形構造エレクトロニクス(IMSE™)を使用して製造され、洗練された電子機能を備えた軽量で薄型の3次元スマート成形構造を示しています。

Bat Ray設計時の目標は、「軽量化」をサポートし、製造を簡素化しながら、使いやすさと美しさを満たすことでした。

Bat Rayの形状と触り心地は、ドライバーの注意散漫を減少するために直感的に操作できる設計を施しています。 凹凸のあるボタンと質感のあるスライダは、感覚で簡単に操作が可能です。 さらに、デザインは車両のルーフラインに沿って輪郭を描き、インテリアデザインの美学を補完します。

 

 

主な機能

  • 光らせる事の出来るアイコン(文字を含む)
  • 静電容量式タッチボタン(8)および様々な機能(照明、サンルーフコントロール等)が操作可能な多機能スライダ
  • カーテシーランプ
  • アンビエントスタイリング照明用のストライプランプ
  • 無線通信用のBluetoothアンテナ

Bat Rayの機能とスタイルは、どちらも高速で安価な印刷プロセスによりツールの変更をせずに更新可能です。表面デザインと触感の変更する際は、表面印刷の素材やデザインを変更する事により簡単に更新できます。また、電子機能も印刷プロセスで作成されるため、製品のフェイスリフトや新しいターゲット市場向けにアップデートすることも可能です。

Bat Rayパーツの概要

  • 一体型のシームレスなデザイン
  • 厚さ:5 mm
  • 重量:200グラム
  • インモールド可能な機能:
  • 回路、タッチコントロール、Bluetoothアンテナ、照明(LED)
  • その他外部システムエレクトロニクス

 

生産プロセス

  • スクリーン印刷と硬化
  • 電子部品の表面実装(高速2次元)
  • 高圧熱成形
  • 射出成形

ツーリング要件

  • 射出成形(1)
  • A(上部)フィルム形成(1)
  • B(下部)フィルム形成(1)
  • フィルムトリミング(2)

 

図4: Bat Rayのバリエーション(ツールの変更はないまま、デザインや機能を変更)

 

Bat Rayの構造

  1. A表面:硬質コーティングされたポリカーボネートフィルム(0.375 mm:自動車承認済み)
  2. 成形樹脂:ポリカーボネート
  3. 電子部品:LED、上面発光、側面発光(白、青、赤、RGB)
  4. 印刷回路:導電性インク、誘電体
  5. B表面(電子回路用基板):ポリカーボネートフィルム(0.25 mm)
  6. 外部接続:フラットケーブル

 

テスト済みで実績のある信頼できるテクノロジー

著:Dave Rice(TactoTek社/Senior Vice President)

 

TactoTek社について

タクトテック社(フィンランド)は2011年に設立された射出成形構造エレクトロニクス (IMSE™: Injection Molded Structural Electronics) 技術のリーディングカンパニーです。耐久性に優れた3D射出成形プラスチック内に、プリント電気回路や電子部品を統合し、カプセル化する技術を提供いたします。

お客様の目的やコンセプトをIMSE™ソリューションにより実現させるため、製造ライセンスの提供だけでなく、開発段階及び製造前のプロトタイプ開発のお手伝いも可能です。

◆製品ページはこちら: https://cornestech.co.jp/product/products_tactotek_1