2014.08.22

【Webマガジン Vol.11 – Aug., 2014】環境振動を用いたエネルギーハーベスト

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この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
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当社WebマガジンVol.10(2014年6月)にて、エネルギーハーベストの元と考えられるものには、太陽光、熱、振動、無線等があることを説明し、それぞれの代表的なデバイスを紹介しました。ここでは、その中から振動に注目し、IoT (Internet of Things)の問題点の1つである「バッテリ寿命」を解決する方法についてMicroGen社を事例に説明します。

IoT(Internet of Things)について


図1. Intelligent Systems for a More Connected World

 

近い将来にトリリオン(1兆)個の無線センサが、インターネットを介して様々なデータをやり取りするようになることが予想されています。IoTの世界が現実になるにつれて、どのようにセンサに電源を供給するか、どのようにバッテリを交換するかが、このシステムのアキレス腱であることが分かってきました。この問題を解決する方法として、現在考えられているのがエネルギーハーベスタです。エネルギーハーベスタの中で、IoTの電源として有力視されているは次の通りです。  「ソース: IDTechEx (January 2014)」

  • 24% 振動(圧電)
  • 20% 振動(電磁誘導)
  • 10% 太陽光
  • 46% 熱

MicroGen社にてそれぞれを検討した結果、最も小型で安価に製造できる可能性があるのは圧電型振動素子であるとの結論に達し、開発を進めてまいりました。MicroGen社は、標準の圧電MEMS製造技術を用いて、100~1,000µWのDC電源を製造することに成功していますが、これは一般の無線センサが必要とする電源(100µW)を超える値です。

 

圧電MEMS振動エネルギーハーベスタ

この圧電型エネルギーハーベスタは、小型、低価格、長寿命、高信頼性という特徴がありますが、大きな電力を発生できないという問題がありました。MicroGen社のMEMSデバイスは、圧電材料のカンチレバーで機械エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、大きな電力を発生することが可能になりました。

 

圧電材料でコーディングされたカンチレバー

 

カンチレバーと10セント硬貨

 

デバイス技術の発展によって、無線センサが必要とする電力は年々減少しています。一方、エネルギーハーベスタで発生できる電力は上昇しており、現在この両者がクロスするポイントに達しようとしています。このエネルギーハーベスタ実際の応用として、MicroGen社の技術を使ったタイヤの圧力モニタリングシステムが開発されています。

振動エネルギーで発電されたエネルギーが、タイヤの圧力・温度センサと無線送信回路に電力を供給します。ここで使用されている振動エネルギーハーベスタは、タイヤが接地した時のショックをエネルギーに変換するVIBE (Vibration Impulsed Broadband Excitation)型のデバイスが使用されています。

 

タイヤの圧力・温度センサ

 

 

振動エネルギーハーベストの応用例

ビル内の空調機に取り付けられた振動発電による無線センサが、温度のモニタを行っています。これは、ビル内で常時運転されている空調装置にエネルギーハーベスタを取り付けた場合のケーススタディです。

下記データの通り、202.077Hzにピークがある振動をとらえ、3.1Vの安定した電源を供給し、継続的に温度をモニタすることができます。このエネルギーハーベスタの共振周波数は、カンチレバーとカンチレバーに取り付けられたおもりによって決定でき、ここでは約200Hzに共振周波数があるため、モータの振動を安定的に電気に変換してバッテリをチャージし、常時3.1Vの電圧を発生しています。

 


図2. 応用例

 

  小型で安価に製造が可能で、無線センサを駆動するのに必要な電力を供給できるデバイスとして、圧電MEMS振動エネルギーハーベスタが有力であることが分かっています。今後は、このデバイスを安定的に製造できる技術を確立することが待たれています。MicroGen社は、2015年にこのデバイスの正式なリリースを予定しています。