2018.06.21

【Webマガジン Vol.24- June, 2018】Column: Beaglebone BlackでFLIR Bosonを動かそう

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コーンズテクノロジー編集部
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BBBで「ネットワークサーマル監視カメラ」を構成してみよう!

Beaglebone Black

もう旬を過ぎた(過ぎ切った?)感のあるBeagleBone Black(写真参照のこと)ですが、初代がリリースされた2013年春以降、現在でも生産が続いているようです。通常、BeagleBone Blackを縮めてBBBと呼ばれます。

そんなBBBを使って、FLIR社の、かなり安価な赤外線カメラ製品である、Leptonを動かす事例がFLIR社自身のサイトでも紹介されていますが(事例がちょっと古くなってきていますので、近いうちにこちらでも試してみたいと思っています)、Bosonだったらどうか?を試してみたいと思います。

Boson自身がすでにUSBカメラとしての機能を含んでいることからか、ほとんど記事を見ることがありませんが、実際に、「ネットワークサーマル監視カメラ」を構成してみたいと思います。

赤外線とその性質

赤外線は、可視光線よりも波長が長い電磁波で、中には近赤外線を感知できる方もおられるそうですが、ほぼ、目で見ることはできません。
赤外線については、Webマガジン「赤外線カメラの初歩」の「1.はじめに」を、まずは読んでみてください。

FLIR Lepton と Boson

FLIR社は、赤外線カメラの老舗で、大きな市場シェアを持っている米国のメーカーです。ヘリコプターに搭載して捜査を行うような、製品としての赤外線カメラから、組み込み向けのモジュール製品まで、可視光寄りの近赤外線から更に波長が長い中赤外線・遠赤外線まで、それぞれに応じたラインアップがあります。ここで紹介するLepton・Bosonは、冷却機構を持たない非冷却型、と呼ばれる遠赤外線カメラに分類されます。
遠赤外線は、物質が燃焼するときの熱として良く知られています。 可視光の世界では、暗闇に紛れていても遠赤外では見ることができ、そのためにセキュリティカメラおよびその発展形として、ADAS(自動車の自動運転支援システム)における歩行者・動物検知や、機械の異常摩擦の検知に使用されます。

Lepton

Leptonは、組み込み製品向けの小型QFNパッケージのモジュール製品で、80×60、最新のLepton3では160×120(QQVGA)ピクセルの解像度です。遠赤外線、波長8μm~14μmに感応するセンサを使用しており、レンズと合わせた外形寸法は8.5×11.7×5.6mmと非常に小型です。Leptonには、撮影対象の温度測定を行えるラジオメトリモードが搭載された製品もあります(Lepton2.5)。

Boson

Bosonも非冷却型で、Lepton同様波長8μm~14μmに感応する遠赤外カメラですが、Leptonより組み込みwebカメラ的な要素を持ち、解像度も320×240 (QVGA)および、640×512(VGA)がリリースされています。
Bosonには現状温度測定機能が搭載されていませんが、赤外線放射を撮影していますから、特定の環境下では、放射を温度へと換算することができます。Bosonで温度を測定されたい場合は、別途お問い合わせください。

赤外線画像

赤外線カメラの利用に際して、撮影対象の温度がカラー階調として撮影される、と勘違いされていることがありますが、実際には、撮影対象の赤外線放射が白黒階調(輝度)として撮影されているとお考えください。つまり、赤外線放射をセンスするボロメーターという素子自身からは、撮影対象の赤外線放射が、ボロメーターから出力される電圧の高低として出力されています。

通常の可視カメラによる画像は、目で見えるようにものを映す役割を持っています。赤外線カメラによる画像は、もはやこうした役割から離れています。しかし、視認性を向上させるために、被写体の温度がより直感的に把握できるよう、通常のカラーではなく疑似カラーを用いて、温度情報の視覚化、という処理を行います。よく目にする赤外線画像は、白黒階調を視覚的に取り扱うことができるような、疑似カラー処理を施しているわけです。
その視覚化に際しては、例えば、冷たい部分は青系統の配色、熱い部分は赤系統の配色を行うなど、目的に応じた視認性向上のために有益な、いくつかの表現ができるようになっています。

尚、温度測定機能を持つカメラの場合、撮影対象が赤外線を反射するような素材である場合には、正確な温度を測定するために、反射分を差し引いてやらなければなりません。

画像イメージとしての赤外線画像

カラー画像を表現する際、色空間は様々な方法で表現されますが、その中の特定の情報の表現には8bit階調が使われています。階調が細かくなればそれだけ「リニアな」色空間上の変移を表現しますが、その結果として、ドラスティックな色の違いがないシーンでは、コントラストが低下したぼやっとした表現になります。

 

(図1 16bitデータのままの画像)

 

Bosonの場合16bit階調、Leptonの場合14bit階調で赤外線をセンスしますが、そのデータを画像として表現した場合、大きな温度差が存在しない画像、つまり自然な環境を撮影した場合は、ぼやっとしたモノクロ映像になります(図1)。
そこに何か赤外線を放射している物体があることを知ることができるかもしれませんが、画像としてみた場合は、視覚としてその差は感じづらくなります。そのため、16bitデータを、8bitデータへと圧縮して、画像として物体を認知し易くする処理を行います(図2)。 この処理は一般に”AGC”(Auto Gain Control)と呼ばれますが、この処理方法には様々な技術があり、赤外線カメラメーカーの特色が出る部分になります。

 

(図2 前図と同じ画像に、ImageJによりAGCを施したもの)

 

なお、圧縮、とした通り、16bitデータから8bitデータへと、規程の手法に基づいて変換が行われます。そのため、元の16bitデータが、撮影対象の赤外線放射量を取り込んでいて、正しく温度データを表現していたとしても、AGC処理後の8bitデータからは、それらを知ることはできなくなります。これは、Boson固有の現象ではなく、温度測定機能を持っているLeptonやTau2カメラでも同様の現象です。