2022.07.27

Column: WPS 機能のご紹介(A2DP/AVDTP編)

FRONTLINEWEBマガジン

  • TOP>
  • 特集>
  • Column: WPS 機能のご紹介(A2DP/AVDTP編)
コーンテクノロジー
この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
コーンズテクノロジーでは先進的な製品・技術を日本産業界へ紹介する技術専門商社として、通信計測・自動車・防衛セキュリティ・電子機器装置・航空宇宙・産業機械といった技術分野のお役立ち情報を紹介しています。

本コラムの構成

■はじめに
■確認ポイント1:SDPでSRCとSNKが互いのService Recordを取得する例
■確認ポイント2:AVDTP Signaling ChannelとTransport Channelの確立
-AVDTP Signaling Channel (1)
-AVDTP Signaling Channel (2)
■確認ポイント3:Get Capabilitiesで得られた情報例(SBC)
■確認ポイント4:AVDTP Media情報(SBC)
■重要ポイント1:Media Transport ChannelのMTUサイズとパケットタイプ
■重要ポイント2:SBCのビットレート、フレーム長計算式
■終わりに

 

はじめに

先日、Bluetooth業界で大注目の次世代Bluetoothオーディオ規格「LE Audio」の仕様が全て完成し公開されました。Teledyne社でも皆様への解析ソリューション提供に向け対応を随時進めております。

そこで今回はLE Audio解析の本格的な普及前に従来のBluetoothオーディオ規格「Classic Audio」の復習編としてWireless Protocol Suite(WPS)から得られるA2DP(Advanced Audio Distribution Profile) とA2DPに関連した情報(SDP、AVDTP、L2CAP)について紹介します。

A2DPでは必須コーデックとしてSBCが、オプショナルコーデックとしてMP3、AAC、ATRACが定義されています。これらのコーデック以外に独自コーデックであるaptXやLDACなども使われていますが、ここでは主にSBCを中心に説明します。

そもそも何故音楽をBluetoothで転送する際に圧縮するためのコーデックが必要であるかは、Bluetooth仕様はCD音源(44.1kHzサンプリング周波数、16ビット、1,411kbps)には十分な転送能力を備えていなかったためです。

A2DP仕様が作られた当時はまだEDRがコア仕様にはなく、Basic Rateのみだったため、Basic Rateの最大転送レートである723.2kbps以内に圧縮する必要がありました。干渉などによる再送も考慮するとそのおおよそ半分以下のビットーレートに収めるのが妥当と判断されて以下の推奨パラメータが決定されました。

SBC推奨パラメータ画像

SBCは他のコーデックと比較して、高圧縮率時に音質が劣化し易いという欠点はあるものの、エンコード、デコードに必要とされる消費電力が小さく、必要なメモリも少なくて済むため、ヘッドセットのようなバッテリー駆動の小型機器に適しています。そして何よりもSIGメンバーであれば誰でもロイヤリティフリーで使えるのが大きなメリットです。

ここからはWPSのSummaryとDecode情報でA2DPで音楽転送がどのようにやりとりされ、再生されるのかを見ていきます。

以下にA2DPのProtocol Modelを示します。A2DP仕様では音楽を送信する側をAudio Source Side (SRC)、受信する側をAudio Sink Side(SNK)という2つのロールを定義しています。また、A2DPの転送プロトコルとしてAVDTP(Audio Distribution Transport Protocol)が定義されており、SDPとL2CAP、LMPと共にWPSで見るポイントを紹介します。

A2DPのProtocol Model画像

 

■確認ポイント1:SDPでSRCとSNKが互いのService Recordを取得する例

ここでは、 お互いにサポートするサービスを確認します。

①Central(SRC)がPeripheral(SNK)のService Record(対応するプロトコルとプロファイル)を要求
②PeripheralがSNKのService Record(AVDTPとA2DPのバージョン情報を含む)を返信
③Peripheral(SNK)がCentral(SRC)のService Record(対応するプロファイル)を要求
④CentralがSRCのService Record (A2DPのバージョン情報を含む)を返信

 

■確認ポイント2:AVDTP Signaling ChannelとTransport Channelの確立

AVDTPのL2CAPには複数のChannelがあり、コマンドをやり取りするSignaling Channelと音声を通すMedia Transport Channelを確立する必要があります。
WPS Summary画面のL2CAP Tabには、Streamingを開始する前にこれら2つのL2CAP Channelが接続されることを確認できます。
L2CAP Connection RequestとResponseの後に双方からL2CAP Configuration Requestが送信されますが、SNKがこのRequestでSRCに通知するMTU サイズはMedia Packetタイプを決める要因になるため、注意する必要があります(詳細は後述)。

 

-AVDTP Signaling Channel (1)

ストリームリリースの画像

AVDTP Signaling Channelでは上記シーケンス図のやり取りが発生します。SRCとSNKはどちらもコマンドを送信するInitiator (INT) になることができますが、SRCがINTになることが多いです。

 

-AVDTP Signaling Channel (2)

(1)で紹介したシーケンス図の実際の解析画面は以下の通りになります。SRCはSNKに対して、 AVDTP Signaling ChannelでSNKが対応しているSEP(Stream End Point)の情報を入手(Discover)し, 入手したSEPごとにCapabilityを問合せ(GET_Capabilities or GET_All_Capabilities)することにより、SNKが対応するコーデックとパラメータ情報を入手します。それらのSEPの中からSRCは一つのSEPを選択し(SET_Configuration)、OPEN(Media Transport ChannelのOpen)し、Streamingを開始(Start)します。以下の例ではSNKはDelay Reportも送信しています。

 

 

■確認ポイント3:Get Capabilitiesで得られた情報例(SBC)

 

 

■確認ポイント4:AVDTP Media情報(SBC)

SRC側で使うことに決めたパラメーターとしてAVDTP Media Tabで送信されたメディアパケットの情報(コーデックやそのパラメータ)を見ることができます。また、Timelineで送信されたパケットタイプ( 2DH5など)も見ることができます。

次にA2DPを解析する際に重要なポイントを2点紹介いたします。

 

 

■重要ポイント1:Media Transport ChannelのMTUサイズとパケットタイプ

Media Transport ChannelのMTUサイズとパケットタイプ画像

SBCではSNKがMedia Transport Channel用L2CAPのConfiguration RequestでSRCに通知するMTUサイズによって送信パケットのタイプが上の例のように決まります。SRCとSNKが共にEDR対応の場合、EDR2MbpsもしくはEDR3Mbpsが選択可能ですが、EDR2Mbpsの方がEDR3Mbpsより受信感度が高い(音が途切れにくい)ことを考えると、EDR2Mbpsでより効率的(時間占有率が低い)なのはMTUサイズが672octetsの方です。SNKはLMP supported featureでACL EDR 3MbpsをDisableすることでEDR 2Mbpsしか使わせないことも可能です。
ちなみに独自コーデックであるaptXやLDACはSNKがEDR3Mbps対応でMTUサイズが672より大きくても2-DH5しか使わないようにしています。

 

 

■重要ポイント2:SBCのビットレート、フレーム長計算式

上記計算式から推奨パラメータのHigh Quality(44.1kHz, Joint Stereo、Bitpool値53)のフレーム長は119バイトとなり、2-DH5パケットには以下のように5つのSBCフレームが入ります。

SBCフレームの画像

 

■終わりに

従来のClassic Audioにおける音楽伝送で重要なA2DPの確認ポイントをみてきました。上記のように詳細をプロトコルアナライザで確認することで、Bluetoothオーディオをより高音質で、かつ音途切れを少なく、転送する方法を探ることができます。LE Audioではまた違ったプロファイルやコーデックが誕生しておりますが、従来と比較しつつ自社製品におけるClassic AudioでのBluetooth品質を復習する際にお役立ていただけますと幸いです。

以下のリンクでは、Bluetoothオーディオ解析に役に立つBluetoothプロトコルアナライザ製品をご紹介しております。

     

 

Teledyne LeCroy Frontline社 Bluetoothプロトコルアナライザ製品一覧ページ

      https://www.cornestech.co.jp/tech/frontline/

また、弊社ではアナライザをお持ちでないお客様向けにBluetoothの測定・解析サービスをご用意しております。Bluetoothオーディオに関するお悩みや品質向上をしたい方は、以下より詳細をご参照ください。

 

Bluetooth 測定・解析サービスのご紹介

https://info.cornestech.co.jp/Teledyne_Bluetooth_Measurement_Service

その他にもTeledyne社製品・サービス、LE Audio最新対応状況などに関するご質問やご要望等ございましたら、ページ下部のWEBマガジンお問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。