2025.01.07

ローカル5Gとは?ローカル5Gのリット、課題、失敗しないポイントを、事例を通して紹介

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コーンズテクノロジー編集部
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5Gの技術はワイヤレス通信の高速化を実現し、大容量データのやり取りが瞬時におこなえるようになりました。それにより、高画質な動画をリアルタイムで配信できるようになるなど、インターネット利用の幅は大きく広がっています。

5Gは大きく、パブリック5Gとローカル5Gに分けられますが、本記事では、ローカル5Gとその活用事例、導入時のポイントに関して詳しく解説します。

 

 

パブリック5Gとローカル5Gについて

5Gとは、第5世代移動通信システムのことです。大容量のデータを高速で通信でき、2020年の導入開始以来、全国的に展開されています。

5Gでは通信の遅延が前世代の移動通信システムである4Gの約10分の1に抑えられており、動画やライブ配信の安定性や画質が向上しています。これにより、スマートフォンでも高画質のライブ配信を手軽に視聴できるようになりました。

一方、ローカル5Gは、通信事業者が提供する5G(以下、パブリック5G)とは違い、企業や自治体が自ら管理するエリア内で独自に第5世代移動通信システムを構築し、運用できるプライベートなネットワークのことです。郊外のパブリック5Gエリア外に工場を建設する場合や、自動化が進み大規模な通信が必要となる工場などでは、ローカル5Gの活用が見込まれます。

 

なぜパブリック5Gでなく、ローカル5Gなのか?

パブリック5Gは通信事業者が提供する第5世代移動通信システムで、各通信キャリアを通して提供されています。スマートフォンなどの通信キャリアを使用する際には通信事業者のパブリック5Gを通してデータ通信がおこなわれており、サービスは日本全国に及んでいます。

しかし、パブリック5Gは不特定多数が利用するため、利用者が集中すると通信障害を起こしたり、通信速度が下がったりするなど、安定性に不安があります。一方、ローカル5Gは企業などが独自に設置し、従業員や関係者など企業が許可するユーザのみしか利用できません。そのため、ローカル5Gは、安定した通信を提供でき、自社の業務に応じた通信システムを構築・運用ができます。

なお、電波による通信は総務省により使用できる周波数帯が割り当てられており、使用する周波数帯によっては免許が必要です。同様にローカル5Gの周波数帯も使用の際には免許が必要なため、総務省へ申請して免許の交付を受ける必要があります。

 

 

ローカル5Gのメリットとは?

ローカル5Gにはパブリック5Gと比べてさまざまなメリットがあるため、コストをかけてでも導入する企業が増えています。ここでは、ローカル5Gのメリットを解説します。

 

安定した高速大容量通信

パブリック5Gは他のユーザーによる影響を受けますが、ローカル5Gは独自ネットワークのため、外部のアクセスを制限でき、他のユーザーの影響を受けずに安定した高速大容量通信がおこなえます。

リアルタイムでの通信が必要な環境でパブリック5Gを使用すると、遅延が起こった場合などに業務に支障が出る可能性がありますが、ローカル5Gを利用すればこのようなリスクは抑えられます。ローカル5Gの安定した大容量通信により、AIによるリアルタイム監視やロボット同士の連携など、より複雑なシステムの運用も可能になります。

 

上り・下り速度の比率をカスタマイズ可能

ローカル5Gでは、上り(アップロード)と下り(ダウンロード)の速度比率を調整することが可能です。例えば、製造業で映像データを収集する際には大容量データのアップロードが必要です。その場合には、上り速度を優先するようにカスタマイズすることでスムーズな映像配信が可能となります。

また、映像の高画質化も実現でき、これまで見落としていた不具合の検出などが期待できるうえ、カメラの台数を増やすことで、監視体制が強化できるメリットもあります。

 

広大なエリアカバー

ローカル5Gは工場内だけではなく、スタジアムや空港、農地など、広範囲をカバーすることが可能です。特に農業分野では近年、農業機械の自動化や農業用ロボット、ドローンの導入が進んでいます。それにともない、管理する農地が広域化していること、また、農地や収穫物が画像で管理されるようになったことから、ローカル5Gの需要が高まっています。

 

セキュリティ強化につながる

パブリック5Gは通信キャリアから誰でもアクセスできるため、パスワードや個人情報などの盗難が発生する恐れがあります。一方、ローカル5Gはアクセスする端末を制限できます。これにより外部からのアクセスは難しく、セキュリティを強化できるメリットがあります。

 

 

ローカル5Gの活用事例

続いて、実際にローカル5Gがどのように活用されているのか、業界毎に解説します。

 

ローカル5G活用事例1:  製造業

製造業では、ローカル5Gを使ったAIやIoT技術を用いた生産ラインの最適化や自動化が進んでいます。特に、危険区域の点検など、人体に危険が及ぶ可能性がある作業は走行ロボットが担うようになってきており、事故防止につながると期待されています。例えば、ガス漏れや設備の劣化検知の現場で、カメラを搭載した走行ロボットによる監視がおこなわれている事例があります。

一方、ローカル5Gは電波を用いた通信であるため、障害物があると電波強度が弱くなる欠点があります。この欠点の改善が、今後のローカル5Gの技術的な課題となっています。

 

ローカル5G活用事例2:  物流業

物流業界でも、AIを使った画像解析による自動検品や自動搬送機の導入などの自動化が進んでいます。そのようなデータは通信容量が大きくなりがちですが、ローカル5Gを使うことで、倉庫から得られた大容量のデータを活用しやすくし、物流業務の効率化や最適化が図れ、コスト削減や生産性向上につながっています。

 

ローカル5G活用事例3:  農業

農業分野ではスマート農業が推進されており、農薬の散布、AIの画像解析による収穫物の選別、病虫害発生のチェック、草刈り機の遠隔操作などの効率化が進んでいます。スマート農業化にともないデータ通信は増えておりますが、圃場内にローカル5Gを導入することで、パブリック5Gにアクセスしにくい郊外や山地などでも最新テクノロジーを導入できるようになっています。

 

ローカル5G活用事例4:  医療

医療分野では、ローカル5Gを活用することで、遠隔診療や病気の画像診断などが身近になり、診断結果の即時共有も可能にします。さらに、手術支援ロボットなどを用いる高度医療では安定した通信環境が求められます。また、医療機関ではリアルタイムの通信だけでなくデータ保護も重要であるといった点でも、ローカル5Gは欠かせない技術となりつつあります。

 

ローカル5Gの課題と失敗しないためのポイントは?

ローカル5Gの導入では社内で通信インフラを整備する必要があり、初期投資が発生します。投資に見合った効果を、ローカル5Gから得るには、検討しておくべきポイントがいくつかあります。その代表的なものが下記の3つです。

 

  • 使用する周波数帯が決まっているため、端末もローカル5Gに対応したものが必要
  • 導入後の運用で専門的な知識が求められるため、技術的なサポート体制を整える必要
  • 建物の構造や設置物の影響による通信障害、既存の電波や空調設備のモーターの高周波による干渉が発生しないか調査が必要

 

これらのことを考慮し、運用体制の構築、導入環境の調査を踏まえて、受信機の設置場所、どの機器を使用するかの検討をする必要もあります。

 

 

5Gネットワークテスタを使った、ローカル5G導入環境の調査が大切

 

前述のように、ローカル5Gは無線通信(ワイヤレス通信)のため、導入する場所の環境に左右されます。そのため、ローカル5Gを設置する場所の電波状況をしっかりと確認しておくことが肝要です。そうした無線通信の調査に貢献する機器が、5Gネットワークテスタです。その代表的製品が米国VIAVI Solutions社が提供する5Gネットワークテスタ、OneAdvisor800 です。

 

Viavi社の5Gネットワークテスタ OneAdvisor800 とは?

5Gでの通信は、高速通信を可能にしますが、直進性が高いうえに他の波長の電波の干渉を受けやすいという難点があり、通信性能は使用環境に左右されます。OneAdvisor800 は、周波数 9kHz〜44GHzの測定が可能で、5Gは勿論、LTE(TDD・FDD)、sXGP、地域BWAの測定にも対応しており、ローカル5Gの設置に必要な測定機能を有しております。また、ローカル5G運用開始後の通信トラブルの原因究明にも貢献する、ローカル5G活用に必須の測定器といえます。

 

Viavi社 OneAdvisor800 5Gによる課題改善事例

昨今のローカル5Gの普及以降、OneAdvisor800は数多くの現場で活用されてきました。これまでの活用によって、課題をどのように改善できたのか、具体的な事例を交えてご紹介します。

 

課題改善事例1:ワイン農場

北海道は気候的にワイン用葡萄の生産に適しており、多くのワイン農場があります。しかし、重労働が多いこともあり、深刻な人手不足という課題を抱えています。その解決策として、とあるワイン農場では、ローカル5Gをバックボーンとしたスマート農業を推進し、ロボットによる草刈り、雑草防除などを自動化、IoTを駆使した収穫時期予測を実現しました。さらに、生産指導者が自宅や事務所などからオンラインで葡萄の苗の育成や収穫の指導などをおこないました。

このローカル5Gを使ったスマート農業化に際して、OneAdvisor800 を活用いただきました。圃場全体の5Gの電波環境を可視化することで、ロボットやカメラなどを安定したローカル5G網につなぐことを可能にしました。結果、60%以上の効率向上を達成するとともに、生産指導者の稼働率が20%向上しました。さらに、IoTによるモニタリングでは収穫ロスを50%削減できるなど、大きな成果が上がっています。

 

課題改善事例 2:バスケットボールアリーナ

バスケットボールアリーナでのパブリックビューイングでもローカル5Gが活用されています。カメラで撮影された試合の映像をリアルタイムで遅延無く伝送するには高速通信が必須となります。

そこで、あるバスケットボールアリーナではローカル5Gの導入により、視聴者にカスタマイズされた番組提供や遅延の無い高画質な試合映像を人々に届けることを実現しました。

その際に、 OneAdvisor800を用いて、アリーナ内の電波到達状況と電波品質の可視化を行いました。それにより、バスケットコート周辺の最適な高画質カメラの設置場所を特定し、ミリ波を使った映像伝送によって低遅延・高精細なパブリックビューイングを実現しております。さらに、AIカメラの導入で、視聴者それぞれに向けてのカスタマイズ配信が可能になり、編集効率も60%向上するという効果も及ぼしました。結果としてバスケットチームの人気拡大と地元ファンの増加に成功しています。

 

 

まとめ

現在は多くの分野にAIを始めとしたさまざまな技術が導入されており、特に製造業や医療、物流、農業などの分野で革新が進んでいます。それらの革新は安定した高速大規模通信があって初めて実現できるものであり、それを支えているのがローカル5Gです。そうしたローカル5Gの導入には、事前の調査・運用開始後のモニタリングが非常に重要となっています。ぜひ、失敗しないローカル5Gのためにも、5Gネットワークテスタ、OneAdvisor800を活用ください。