2013.09.22
【Webマガジン Vol.6 – Sept., 2013】技術用語 簡単解説シリーズ パルス状RFパワー測定における注意点
WEBマガジン
はじめに
前回のテクニカルレポートで、RFパワーにおけるセンサはいくつか存在し、測定対象に応じて最も適合するモノを選択する必要があることと、“ダイオード型センサ”と“サーモカップル型センサ”の使用上の注意点を説明しました。
測定する“パワー”の波形には大きく分けて、連続的(アナログ的)な波形(CW: Continues Waveform)とパルス状(ディジタル的)の波形があります。 近年はデジタル化が進み、パルス状のパワー測定の需要が増えてきております。
今回はBoonton社が提供するパワーセンサを例題に、前回のテクニカルレポートで説明できなかったパルス状のRFパワー測定を行なう際のセンサタイプ毎(“ダイオード型センサ”と“サーモカップル型センサ”)の特徴や取り扱い上の注意点などを簡単に説明したいと思います。
パルス状RFパワーの計算に関して
長方形状のパルスRF信号では、繰り返し発生するデューティーサイクル(負荷サイクル)が既知の場合、パルス状のRFパワーを平均値から計算することができます。 デューティーサイクルは、繰り返し周波数の間隔毎にパルス幅(T)を割る又は、以下の図1に示されるような繰り返し周波数のパルス幅の時間を掛けることで算出することができます。
図1. デューティーサイクルとパワーの関係に関して
この方法では、サーモカップル型センサの全ダイナミック・レンジで有効であり、非常に高いパルスパワーの測定を可能にします。 ダイオード型センサでは、この方法はダイオードの二乗特性の領域内でのみ有効です。
パルス状RFパワー測定:サーモカップル型センサ
図2に、サーモカップル型センサに適合する有効なデューティーサイクル及びパルスパワーの領域を示します。 デューティーサイクルの値が減少するにつれて、パルスパワーにおける平均パワー値は減少し、ノイズは誤差の要因となります。 更にパルスパワーの過負荷(オーバーロード)の制限が存在し、デューティーサイクルがどれほど短くても、この過負荷の制限は適用され、原則的に、平均値パワーを超えることはできません。(測定の制限とセンサの焼損レベルの間にはヘッドルームがあります)
サーモカップル型センサでの検知方法は“熱”であるため、理想的にはサーモカップル型センサは最大の平均値パワーより2桁大きいパルスパワーを取り扱うことができます。 最小のパルスの繰り返し周波数はおよそ100Hz(10ms/1パルス)です。
図2. Boonton社サーモカップル型センサにおける相関図