2016.01.22

【Webマガジン Vol.17 – Jan., 2016】Product News:高速熱画像による「爆発事象」の新しい観察方法-Telops

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この記事の監修者
コーンズテクノロジー編集部
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工場等における爆発事故は作業者を危険にさらす大きなリスクの一つです。爆発に起因する熱や衝撃波は有害で、危険状態や死傷者を誘発します。特に粉塵(小さい粒子)爆発は、しばしば石炭、小麦粉、花粉などの普通の素材に起因しているため、より一層厄介です。粉末化された多くの金属が(アルミニウム酸化物やマグネシウムなど)、大気中に滞留すると、爆発を引き起こす危険な粉塵を形成します。

爆発の効率は通常、放出されるエネルギーの量、熱的な膨張性ガスが放出される速度および発生した熱波と放出された粒子の空間/時間的な変化により特徴付けられますが、この特定のタイプの爆発を理解するためには、点火、爆発及び伝搬現象の主な特徴を理解している必要があります。Telops社製「FAST-IR 1500高性能赤外線カメラ」による高速赤外線の画像処理を使用して行った金属粒子 粉塵爆発の測定評価結果を以下に説明します。

金属粒子 粉塵爆発実験

図1は、高速熱画像処理カメラで爆発を分析するメリットを示すために用いられた(フィールドテスト)実験の内容を説明しています。 Telops社FAST-IR 1500により30メートル離れたから爆発を垂直に撮影します。実験内容のパラメータは表1のとおりです。


図1. 実験内容の説明、   表1. 実験内容の主要パラメータ

金属粒子の粉塵は、マグネシウムやアルミニウム酸化物などの種々な粒子の混合物を使用して作成しました。典型的な金属粒子のサイズは、直径がほんの数ミクロンです。

  • 1) 粉塵をシミュレーションするために、金属粒子を小さい円錐タイプの容器内に配置。(図2:左)
  • 2) 圧力がかけられたガスが、粉塵を広げるために、個々の容器内に印加される。(図2:中央)
  • 3) 最後に、爆発プロセスを開始するため、粉塵中に熱源を配置し、爆発点火を実施。


図2. 金属粒子 粉塵爆発

結果と考察

測定結果は、キーとなる爆発特性を測定し前例のない性質を明らかにしています。図3は、爆発の段階的な放射輝度の特徴の変化を表しています。各フレームの時間差は666µsです。左上にある画像は最初の発火点を表わしています。それに続く5つの画像(右に続く)は、第2の発火点により起こった乱れた流れの大変興味深い詳細を明らかにしています。最後の3つの画像(一番下の3枚)を詳しく解析すると、金属粒子の爆発点火伝搬を評価し、影響を測定する事ができます。

第2の発火点に関して、さらに各画像間の放射輝度の違いを計算し表したものが図4です。個々の点火ポイント(第2)がいくつか局地的なピークから検出できます。(35ms~45ms)


図3. 段階的な爆発


図4. 爆発発火点と伝搬グラフ

  例として、発火シーケンスが始まった約38ms後に、概ね2ms毎にピークが発生し、局地的に異なる放射輝度を表します。これら局地的なピークは、粉塵に伝搬する第2の発火点に起因しています。発火点の影響範囲は、Telops社特許出願中の技術であるpixel per pixel temporal radiance variation techniqueに基づいた動的なフロー解析を通じて計算されます。この技術は図5で説明します。

小さな赤い軌道は流れ方向を表しており、軌道の長さは膨張性ガスの速度と一致しています。このマップから、局地的に最大になっている部分(印がつけられている部分)=「明白な発火」を示します。局地的な発火点の範囲は、流れるスピードと方向から計算されます。(補足: 発火点1が発火点2を生成する事を以下の印で表します。)

  高速な赤外線画像はまた、膨張性ガスによる流速のプロファイルの計算も可能にします。図6で説明している通り、発火点1を取り囲んでいるガス速度は、[U、V]=[3410、5530]のピクセル/秒であり、Uは水平方向、Vは垂直方向の速度です。この結果から、切り離された発火点に起因している局地的な運動エネルギーが取り出され、局地的な熱力学の振る舞いを理解するために役立ちます。


図5. 流れ方向と速度の解析


図6. 膨張性気体の速度と方向

結論として

高性能FAST-IR 1500赤外線カメラは、経時的に発生されたエネルギーの合計や、爆発のアクティブな半径などのクリティカルな情報を提供する事が可能です。図7に例示するように、爆発の間に放出されたエネルギーの合計や発生中の表面温度を検出する事が出来ます。実際に、全体のエネルギーは、最初の発火点から約5ms~8ms後に約40MJで(それはTNT 9kgに相当 )ピークに達します。

全体のエネルギーの25%以上は、この時間内で放出されます。測定された最大温度は、2700Kであり、8.5メートルの爆発のアクティブな半径はこのシーケンスから直接計算されます。


図7.爆発により放出されるエネルギー